【一輪の花】
貴方は砂漠に咲く一輪の花のようだ。
水もない、周りに仲間などいない、同じ景色ばかりが広がる場所で。
強く生きるためだけに特化しつつある花びらで。
私は貴方の魅力に気づいてしまった。
そして、何かできることをしたくなったのだ。
毎日、コップ一杯の水をあげるように。
疲れたり、辛くなったら頼って欲しい。
強くあるだけじゃなくてもいいんだよ。
fin
【魔法】
Q、もしも魔法が使えたら?
A、え、空飛びたい!
Q、もしも魔法が使えたら?
A、んー、時を止めてゲームしまくるわ。
Q、もしも魔法が使えたら?
A、…マジシャンになって稼ぐ。
Q、もしも魔法が使えたら?
A、使いたくなぁい。
fin
貴方はどれ派ですか?
エリンギは空を飛びたいです。
【君と見た虹】
※【バイバイ】シリーズです。過去作品からどうぞ。
戦争は恒久的な停戦となったらしい。なんでも相手国のトップが変わり、合意に至ったそうだ。
その一報を耳にしたとき、仲間たちは負の感情がありながらも嬉しそうだった。解放された安堵感が滲む中、夜の食事はいつもより豪勢だった気がする。
僕はというと、全くそんな気持ちにはなれなかった。“大切な人”を失ってから、まだ日が浅かったからだ。
それでも、今までの僕にはできなかった対応をした。皆が嬉しそうに笑う中、僕も笑顔でいたのだ!「愛想笑い」というやつである。
「今みたいに素直でもいいんだけど、たまには周りに合わせなきゃいけない時もあるでしょ」
そんな時なんて来ない、と当時は反発したが、やはり君にはお見通しだったのだろうか。
そして今、僕は久しぶりに孤児院を訪ねていた。実に10年振りだ。壊滅的とまではいかないが、やはり建物は所々崩れていた。それでも院長は変わらぬ顎鬚と笑顔で出迎えてくれた。
「お久しぶりです」
「よく来たなぁ」
懐かしい扉の周りでは子供達が遊んでおり、自分にもこんな無邪気な時代があったのだろうかと感慨深くなった。
ふと、君はどんな子供だったのかが気になった。
隣国から越してきたとは言っていたが、それ以外何も知らない。考えれば僕は、想像以上に君のことを知らないのかもしれなかった。
室内の廊下を進むと、懐かしい一室にたどり着いた。今は大きく壁が崩れてしまっているが、間違いなく僕の部屋だ。大きな窓があり、僕はここから外を眺めるのが好きだった。
「覚えているかい、あの虹のこと」
院長の言葉に僕は頷く。忘れるはずもない。
「あの日は雨がずっと降っててねぇ。やっと夕方に止んだが、子供達は窓の無い部屋でボードゲームに夢中だったから気づかなかった」
でも君は違った、と優しい目線を向けられる。
あの頃の僕は心を閉ざしたまま、思春期のようなものに入っていた。人との関わりを嫌い、毎日を窓の前で過ごしていた。
「私が様子を見にきたとき、ちょうど窓から虹が見えてね。君は釘付けになっていた」
割れてしまった窓を見る。神様は君だけに見せてくれたんだね、と優しく声をかけてもらい、それは荒んだ心を少しばかり癒してくれた。
「でも、あの言葉は少しばかり嘘でね」
院長は顎を掻きながら、苦笑いで言った。
「というと?」
「もう1人、あの虹を見ていた子がいたんだ」
そう言って、彼は話をしてくれた。
あの子は、隣国から強制追放されてうちに来たんだ。たしか君と、同い年だったかな。10の時、両親を殺したらしい。とはいえ、それは両親が仕組んだことだったみたいだがな。
来たばかりの頃の塞ぎようなんか、君に匹敵するぐらいだったよ。とにかく暗くて、来るものを全て拒んでいた。
優秀な子だったから気の毒でね。君と同じように何かと気にかけていたんだ。あの頃の2人はそっくりだったよ。本人たちは篭っていたから、結局会わず終いだったけど。
それであの虹が出た時、あの子も窓を見ていたんだ。君のよりは少し小さいけど、それでもよく見えた。
それで私は、君に言ったのと同じ台詞を言ったんだ。神様が君にだけ見せてくれた、ってね。
そしたらあの子、つぅーって涙流したんだ。僕の名前、虹が由来なんです、って。ほら、それも君と同じだ。その時声を初めて聴いたんだけど、優しい声だった。
それから徐々に、本来の自分を取り戻したみたいで。学校に通うってなってうちを卒業したんだ。
ああそう、出て行く時にこんなこと言ってたっけ。
「僕、死ぬときは大切な人を守って死にます」
元気にしてるかな、それとも宣言通りの旅立ちをしたのかな。
そんなわけで、君への言葉は少しばかり間違っているんだ。
話が終わった後、僕は開いた口がふさがらなかった。
間違いない。
あの子というのは、君だ。
僕はあの日、君と同じ虹を見ていたんだ。
僕の名前はアルコイという。スペイン語の「虹」から取ったものだ。七色の虹のように、感情豊かに育ってほしいと願いが込められている。
多分僕は、君に出会わなければ真逆の人になっていただろう。
君は僕の名前を知らないはずだ。出会ってからずっと、君は決して僕の名前を聞かなかった。それはきっと、両親のことを思い出してしまう要素になるからだ。
僕は、君の名前を知らないことが心残りだった。
震える声で、尋ねる。
「その子は、なんて、名前でしたか」
院長は、ゆっくりと答える。
「シャテン、フィンランド語の虹から取ったと言っていた。雨が降ってから虹が出るように、辛いことや悲しいことも乗り越え理解できる人になるようにと」
シャテン。
あの柔らかな笑みを思い出しながら、僕はしゃがみ込む。
涙を流す僕の横、大きな窓からは、あの日君と見た虹のような、綺麗な七色が見えていた。
fin
長くなりましたがどうしても書きたくて!
一旦シリーズ終了になります。
【夜空を駆ける】
魔法少女をご存知だろうか?
幼児向けアニメや漫画の題材としても扱われる、あれである。
しかし現実には、魔法少女は存在しない。
存在するのは、魔法“青年”である。
太陽はとっくに沈み、月が空のてっぺんに居座る頃。
俺はいつものように、2階の自室の窓を開け放った。
冬の夜は冷える。冷たい北風がカーテンを揺らし、思わず身震いをした。
ポケットから使い込まれたパクトを取り出す。子供用のおもちゃにしか見えないが、本物である。開くと瞬く間に光が溢れ出し、俺の体を包みこんだ。
スウェットは輝かしい衣装になり、黒髪は青く変わっている。ご丁寧に髪飾りまで付いているが、この姿を見る人は限られている。妹に見せたら喜ぶかもしれないが、そんなことしたら俺の命が無い。
窓枠に手をかけ、一気に飛び出す。乗り出した体は綺麗に宙を舞い、俺は屋根を蹴って上昇した。
「おはよう」
見上げると、相方が手を振っていた。濃紺の空に映える桃色の髪は、もちろん地毛では無い。
「今日も任務遂行しますか」
気合いを入れるため深呼吸し、ステッキを手に取る。
2人の影が、夜空を駆ける。
fin
さて、何故少女ではなく青年なのか?
それは単なるエリンギの好みである(((
【ひそかな想い】
先生!
私、先生が好きです!
なんて、
言えるわけもなく。
既婚者20歳年上に恋して、
報われるわけもないので。
ひそかな想いは
胸にしまって。
私は今日も、
黒板の字を真似します。
fin