8/23/2024, 10:34:37 AM
『俺、好きな人がいるんだ』
『へえ、意外。私の知ってる人? 』
深夜。私はリビングでゴロゴロしながら、隣に座る男の友人と話していた。
私も彼も視線はテレビにあるが、少なくとも私は眠気と中途半端な怠さがあって内容が頭に入らず、隣から聞こえる彼の声がするりと入ってきた。
『ああ、知ってる』
『マジか』
『おう、マジ』
身体を起こして、彼を見る。
そして片っ端から名前を言うけれど、どれも表情を変えずに『違う』と否定された。
『……他にいたかな、あんたが好きになりそうな人』
頭が働いていない。もしこれを聞くのが昼だったのなら、もう少し名前が出てきていたのだろうか。
『告白してみようかなって思ってんだ』
『……マジか』
『おう、マジ』
余計に気になってきた。一体、誰のことなんだろう。
『んー……わかんない、ヒントは──』
それでもやっぱり分からなくて、そう言った時に彼は耳元で囁いた。
『お前にだよ、海』
8/22/2024, 3:56:01 PM
『は、はあ?! アイツのことなんか好きな訳ないし! む、むしろ嫌いっていうか……』
きっと、どこかでは見慣れたもの。
『味のしないガム』とでも言われそうな程に存在するもの。
『ほんと、ドジでバカで……どうしようもないわね』
彼女はいつも、僕に当たりが強い。他の人間には笑顔で接するというのに、幼馴染の僕と接する時だけはその顔を顰め、眉の形を変えて、怒りの言葉のようなものを発する。
けれど、それは不快じゃない。
『ねえ。────。』
『好きです』
好意の裏返しから来るものだと、分かっているから。