NoName

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『は、はあ?! アイツのことなんか好きな訳ないし! む、むしろ嫌いっていうか……』
きっと、どこかでは見慣れたもの。
『味のしないガム』とでも言われそうな程に存在するもの。
『ほんと、ドジでバカで……どうしようもないわね』
彼女はいつも、僕に当たりが強い。他の人間には笑顔で接するというのに、幼馴染の僕と接する時だけはその顔を顰め、眉の形を変えて、怒りの言葉のようなものを発する。
けれど、それは不快じゃない。
『ねえ。────。』
『好きです』
好意の裏返しから来るものだと、分かっているから。

8/22/2024, 3:56:01 PM