朝起きて、冷たい水で顔を洗う。
制服に着替えて学校に行く。
授業を受けて、学校からバイト先に向かう。
家に帰ったら、お風呂に入って眠りにつく。
惰性で続ける生活。
生きる意味のない生活。
こんか退屈な毎日が死ぬまで続くのだろうか。
(テーマ:意味のないこと)
気づけば広い野原に立っていた。
川の流れる音が聞こえてくる。数匹の蝶が目の前を舞う。花の優しく甘い香りがふわりと漂う。時折吹く小さな風が木々を揺らし、花びらを掬い上げる。
ただひたすらに穏やかな時間が流れる。
理想郷に私とあなたの二人だけ。
そんな夢を見ていた。
(テーマ:理想郷)
【あいまいな空】
「…ごめんね」
たった一言で、僕の長年の片思いは呆気なく終わった。
君が去った後の教室で、一人静かに思いを巡らせる。
君と初めて話したのは、一回目の図書委員会の集まりの日。君と話すうちに、どんどん君に惹かれていった。
…なんて君はそう思っているかもしれないけど本当はもっと前から僕は君を知っていたんだ。正直自分でも少し気持ち悪いと思うから君には絶対に言えないけど、高校に入学する前から僕は君が好きだったんだ。
中学生の時に見かけた隣のクラスの女の子。太陽みたいな明るい笑顔が素敵な女の子に僕は恋をした。一目惚れだった。
それからは君を目で追ってばかりの毎日で、話しかける勇気も持てないくせにずっとずっと好きだったんだ。
「…ごめんね…かぁ」
改めて言葉にされるとキツイなぁ、なんて考えながら帰り支度をする。
ふと空をみると、太陽が沈みかけて半分になっていた。
もうすぐ太陽はすっかり隠れて、また明日に顔を出す。僕の知らない新しい太陽として。
僕の手の届かない君は、きっとたまその笑顔で誰かを虜にしてしまうんだろう。
肌寒い風と共に甘い香りが漂ってきた。
金木犀の匂いだ。
私は辺りをキョロキョロと見渡して、少し離れたところにある匂いの元を見つけた。無意味だと分かっているが、私はその木々と空を睨んだりしてみる。
何故匂いを運んでくるんだと。
毎年秋になると鼻をつくそれは、君が私から離れていったあの日と同じ匂いがした。
「ごめ、また、俺のせいで…」
そう俺の親友が目を伏せて言った。得点板を見ると、既に相手はマッチポイント。対して俺たちは五点遅れで相手を追っている。
緊張からかサーブをネットに引っ掛けてしまった親友は今にも泣き出しそうなほど不安そうな顔をしていた。
「大丈夫だって! まだ負けてない」
「でも…」
「でもじゃない。後悔も反省も試合が終わってからだ。まずは今に集中。大丈夫! お前のスマッシュはめっちゃ強い。落ち着いていこう」
そう言って俺は彼の背を叩く。それは、下を見がちな親友を鼓舞するための癖みたいなものだった。
「ああ、そうだな」
「絶対勝つぞ」
「おう!」
そう笑った親友の背を俺はもう一度叩いた。
俺の気持ちが届くよう、精一杯の力を込めて。