見つめられるとうなじが熱くなった。
どうにか抑えようと思って深呼吸しても、熱は治ることを知らず、むしろ火に酸素を送り続けるかのように上昇した。
あぁ、恥ずかしい気持ちがバレちゃうなぁ。
次第に呼吸は荒くなり、視線を逸らすことも困難になる。手が震えて、カシャンと果物ナイフが落ちた。
膝が震えて、へたり込む。
スカートが血に染まる。
目の前のその人は、床に寝そべったままピクリとも動かずこちらを静観している。
へたり込んだせいで距離が近くなり、今度は身体全体が熱くなった。
あぁ、この人の最後に映ったモノが私になっちゃったな。
なんて、恥ずかしくて頬を擦った。
「My heart が heatしちゃう!」
「胸が熱くなる、でいいじゃねぇか」
「この feeling は what!?」
「文法めちゃくちゃすぎるだろ」
「You は何しにJAPNへ?」
「偽番組名になっちゃったよ」
「There is no particular meaning.」
「なんて?」
「There is no particular meaning.」
ないものねだりして満足した?
あれもない、これもない、て嘆いていれば慰めてもらえるとでも思った?
残念ながら、この世の中そんな優しくできていないんだよ。
ないなら、ないなりのやり方で進むしかないんだよ。
体力がないならに瞬発力を、頭脳がないなら経験を、そうやって戦っていくんだよ。
ないものねだりは、いつでもできる。
なら、今やれる事をやりなよ。
吉野家にキングサイズがないなら、自分で大盛りを3つ頼むんだよ。
好きじゃないのに、カフェオレ缶を選んでしまった。
好きじゃないのに、たらこパスタを頼んでしまった。
好きじゃないのに、食堂の真ん中に座ってしまった。
好きじゃないのに、この子をご飯に誘ってしまった。
好きじゃないのに、………
「別に嫌いでもないから。」
パスタをフォークに絡めながら呟くと、目の前のその子がクスッと笑った。
「素直じゃないなぁ」