虹の架け橋
久しぶりに虹を見た
小さい頃は
「わぁ〜きれい…!」
なんて無邪気に喜んでいた
でも、今はただ
虹が架け橋となって、わたしをどこかに連れていってくれるんじゃないかって
ありもしないことを考える
もしも世界が終わるなら
わたしは何をするんだろう
1日中、読書して過ごそうか
それとも、1日中、料理をして過ごそうか
どちらでも極上の幸福なのには変わりないけれど
もしも、世界が終わるなら
わたしは、自分の好きなことをしていたい
誰もいない教室
わたしの心臓の音だけが響いている
いつ…、来るのかな
自分から呼び出しておいて、
まだ時間じゃないのに、こんなにもドキドキしてる
まるで、心臓の鼓動が太鼓みたいだ
ふぅー
大きく息を吸う
その時、教室のドアが開いた
ビクッとわたしの体がはねた
クスッと笑うあなたは、わたしが何を
言おうとしているのか、すべて悟っているようで…
ちょっと、むかついて
でも、ちょっと嬉しくて
『今日は、伝えことがあって、』
どうか、この恋が実りますように…
信号…、
わたしは、信号を見ると思い出すことがあるの
わたしの、儚く、淡い、青春時代のこと
※ ※ ※ ※ ※
その日は、学校でなにもかも上手くいかなくて、ずっと下を向いていた。
信号のことなんて、なにも考えていなかった。
なんなら、信号が赤になってしまって、渡り、死んですらもいいと思った。でも…
『ちょ、おまえなにやってんだよ!信号赤だぞ…!?』
わたしの初恋の人でした。わたしが初めて好きになった人。その日の帰りは、わたしを監視するかのように一緒に隣を歩いてくれた。
『別に、もう信号無視なんてしないし。帰ってもいいのに』
本当はそんなことしてほしくないのに思春期というものは厄介だ。
『いや、だめだ。お前には…、あいつみたいになってほしくないし…』
『あいつ…?』
『…、あぁ…。俺の、一番大事な人』
嫌な予感で、胸騒ぎがした。
『…女の子、?』
照れたような顔を見れば、一目瞭然だ。
『まあな…』
『ふーん』
今にも涙が溢れそうだ。
『あいつも、ぼーっとしてたのか、信号を無視して車に引かれて死んだんだよな』
『そう…』
そんな話…、聞きたいわけじゃないのに、
信号なんて、大嫌いだ
…ただの八つ当たり…
言い出せなかった
あなたの目が、本当にわたしのことが好きなのだと
訴えてくるから…
あなたがこれまで、本当にわたしを大事に
してくれたから…
あなたと過ごす時間がとても楽しかったから…
もっと、あなたといたいと願ってしまったから…
言い出せなかった
"わたしはね、もう、風前の灯なの"