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信号…、

わたしは、信号を見ると思い出すことがあるの

わたしの、儚く、淡い、青春時代のこと


※ ※ ※ ※ ※

その日は、学校でなにもかも上手くいかなくて、ずっと下を向いていた。
信号のことなんて、なにも考えていなかった。
なんなら、信号が赤になってしまって、渡り、死んですらもいいと思った。でも…
『ちょ、おまえなにやってんだよ!信号赤だぞ…!?』
わたしの初恋の人でした。わたしが初めて好きになった人。その日の帰りは、わたしを監視するかのように一緒に隣を歩いてくれた。
『別に、もう信号無視なんてしないし。帰ってもいいのに』
本当はそんなことしてほしくないのに思春期というものは厄介だ。
『いや、だめだ。お前には…、あいつみたいになってほしくないし…』
『あいつ…?』
『…、あぁ…。俺の、一番大事な人』
嫌な予感で、胸騒ぎがした。
『…女の子、?』
照れたような顔を見れば、一目瞭然だ。
『まあな…』
『ふーん』
今にも涙が溢れそうだ。
『あいつも、ぼーっとしてたのか、信号を無視して車に引かれて死んだんだよな』
『そう…』
そんな話…、聞きたいわけじゃないのに、


信号なんて、大嫌いだ

               …ただの八つ当たり…

9/5/2025, 9:49:38 PM