花の香りと共に
会場を埋める黒い服の人たち
なかには泣いている人もいる
僕は、まだ受け入れられない
僕はまだ君になにもしてあげられていない
ついこないだまで、にこにこ笑顔で笑ってくれたのに
僕に、今度水族館行きたいって、言ったのに
僕に…、これからも一緒だねって言ってくれたのに
ああ、みんなが君に花をそえてる
僕も行かなきゃ…、
これが、最期に見る、君の顔
"死"というのが、なぜか僕の心に刻み込まれた
花の香りと共に、君に最期で最大級の愛の言葉を…
『愛してるよ』
君を探してる
"無駄"
"意味ない"
"かわいそう"
わかってる、そんなこと
わざわざ言われなくたって
確かに、無駄かもしれない
意味がなくて、かわいそうと思われることかもしれない
『君はもういない』
それが、どうしようもない真実なのだから
それでも、やっぱり君を
探すことをやめることはできない
まだどこかにいるかもしれない、
また、ふと目の前に現れてくれるかもしれない
また、あの笑顔を向けてくれるかもしれない
そんな叶いもしない、淡い希望を持って…、
終わり、また始まる
いつかは、必ず終わりがくるって
そんなこと、わかってるよ
言われなくたって、自分が一番わかってる
それでも、終わりたくないと思うことは
そんなに悪いこと…?
終わらないでって、願うのは
そんなに悪いことなの、、
どうせ、最期の悪あがきだよ
目を閉じる
また目を開ける
『ああ、また始まった』
もしも、願いが1つ叶うなら…
もう一度、君に会いたい
もう一度、君と話したい
もう一度、君と笑いたい
もう一度、君と並んで歩きたい
もう一度、君と、君の作ったご飯を食べたい
もう一度…、きみを、抱きしめたい…
毎日、空を見上げる度に考える
『そこに君はいるの…?また会いたい…』
最初は、ふと、君がまた会いに来てくれるのではないか
また、あの笑顔をむけてくれるのではないか
そんなことを考えていた
当然、それが叶うことはなかった
諦めていても、願うことがある
もう一度、君と…、
「ラララー」
ふと聞こえた、この歌声
透き通るような歌声
少しでも物音がすると、かき消されそうな声
今すぐに途切れそうなほど小さい声
……それでも、力強い声
心にストンっと何かが落ちたような感覚
心臓がバクバクと音をたてる
ただ、その歌声を聞いていたくて、、
勝手に足が動いていた
最初は、一歩一歩かみしめながら歩いた
けれど、その足は徐々に速くなっていく
はぁ、はぁ、はぁ、
気づいたら息遣いが荒くなっていた
(待って…、待って……、お願い…!)
お願い、まだその声を、歌声を…、"止めないで"