ame

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12/11/2022, 2:20:03 PM

何でもないフリ。
隣で、もしくは後ろで、斜め前で、教室の隅っこで、眠気と戦う君を見ている。時々目が合って、何でもないって感じでそっぽを向く。まるで玉子を包んで保冷剤で冷やすように、机とシャーペンの格闘を楽しむように、何でもないように、何にもないように。
一度声を掛けてしまうともう戻れないから。黒板に向かって説教する教師から目を逸らし、あなたの姿を写す。今日はよく描けているだろうか。その存在を壊さないように、ゴリラのような気高さと、渡り鳥のような柔軟さで、手を動かす。そうするうちに一年経ち、二年経ち、三年が過ぎる。青い海に浮かぶ不確かな春はもう終わる。何もしないふりをして、何でもないように、病に蹂躙されようと、空虚に囚われた猫であろうと、ものともしなかった自分はいつに置いてきたのだろう。そしてもう忘れた。
なんにも出来ないフリをして。

12/10/2022, 2:52:52 PM

仲間。
そんなものはいない。親でも、兄弟でも、友達でも、後輩でも、先輩でも、恋人でもない。それは数ある困難を共に乗り越えた乗組員のような、ただ堕落した生活を送る放浪者のような、何とも言えない絆で繋がってしまった者たち。好きとか嫌いとかそんなものは床の下に埋めて、四方を火山ほど高い壁で覆った内に集まってしまう。
目的は様々だろう。仕事だったり、学校だったり、サークルだったり。残業だったり、補習だったり、集団自殺だったり。何でもいい。とりあえず、何かの意識が一つだけ合致すれば、私は君たちと仲間になれる。そのはずなのに。
自分は仲間を欲するのだろうか。今はもう全て揃っているのに。親も友も恋人も。
仲間とは、こんなにも焦がれてしまうモノ。

12/9/2022, 12:46:10 PM

手を繋いで。
繋がっている。産まれた時から、外に出て友となった日から、あなたを慕うあの日から、尊敬する君と。醜く歪み愛想を浮かべるように、決して痛みを見せぬように、喜びを分かち合うように、いつも一緒にいるために表情を浮かべる。それは雲の上より高く跳ね上がり、自分の中に帰って来る。そして、君に寄り添おうとする。
隣に居て、手を繋いで、笑い合って、涙を呑んで、看取る。このどれを共にしても決して相容れない人もいる。けれど、君とはこのどれも一緒に育みたい。だからまず、手を繋ごう。
一度繋がればきっともう戻れない。それでも、自分と生きていこう、君と生きていこう。

12/8/2022, 2:17:17 PM

ありがとう、ごめんね。
この言葉を言うと涙が出てくる。あぁ、自分ってこんなに素直になれたのかって。あの、目の前が全て崩れ落ちて、全てが敵に見えた時も、笑いかけてくれた友達に笑顔を作れなかった時も、この言葉さえ伝えられていれば後悔しなかった。心の臓がきゅっと締め付けられるような感覚を、毎日のように感じることは無かった。
寒気がする。手先や足先は布団の中でポカポカと温まっているのに、身体の中心の奥の下の方が熱を失っていく。ありがとう。ごめんね。この言葉がどれほど私の感情を揺さぶるのか。分かりたくない。だけどきっと、これからも長い付き合いとなるだろう。
ありがとう。ごめんね。よろしくね。

12/7/2022, 12:22:03 PM

部屋の片隅で。
冬は布団に籠っていたい。きっと誰もが思ったことのある希望だと思う。
毎朝、学校、仕事、娯楽。どれにしたって始まりがある。自分の体温で温まった布団みたいに、穴熊が籠る冬眠中の寝床みたいに、幸せな気持ちが詰まった夢の中。この隅の奥の中の中でいつもいつも閉じこもっている本心のように、固く脆く歯ぎしりをしている奥歯のように、溶け出すことを知らない私はまだ、部屋の片隅。
溶け出たいと思う。何を使っても、誰を使っても。だけど、戻ってきたいとも思う。あの場所は自分の帰る場所だと、片隅が生きてきた証なのだと、誇りを持って胸を張ることができるように。
そんなことを部屋の片隅で悶々と考えるのは、今しか出来ない幸せだと思う。

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