冷蔵庫とエアコンが低い唸り声を上げ続ける
私以外の生命体がいない冬のワンルーム

（寂しさ）

泣き叫びたくなるような夜
埃にまみれたガラス瓶に
君の面影を求めて縋った

脳に広がる酸っぱい匂いは
持ち主がもういないことだけ証明した

（香水）

傷んだ髪が風になびく
枝毛の隙間はワームホール

来月の心の澱が滑り落ちた
チェーンに絡まって断末魔

私は黙ってギアを上げる

（自転車に乗って）

メロンソーダ
文庫本
パンケーキ

ポスター
爪
筆箱

君から借りたままの
ボールペン

（視線の先には）

どろどろの愛を接着剤にして
誰も知らない所へ

僕と君のどちらかが
笑えなくなる日が来るまで

（手を取り合って）