11/6/2021, 6:20:27 AM
『一筋の光』
夜が、明けた。
今しがた昇った太陽の光が、砂塵の舞う部屋に射し込む。そうして、横たわる彼女の死相を優しく照らした。
虚ろに開かれた瞳に、一筋の光が射す。瞳孔に残った僅かな水分は、光を反射して煌めいた。
その光景に、ヒュッと息を飲む。
生きているような、瞳。
その瞬間、コップの水がゴトン、と倒れるように、私はその場で泣き崩れた。
11/4/2021, 7:59:12 AM
『鏡の中の自分』
目を開けると、部屋は薄明るかった。
枕元のスマートフォンに手を伸ばし、画面を点ける。1回目のアラームが鳴る15分前。普段なら再び目を閉じて二度寝と高じるところだが、今朝はそのようにいかなかった。
──寒い。
空気の冷たさに、ぶるぶるっ、と身体が震えた。毛布を顎の下まで引き上げるも、直ぐには暖かくならない。寝ている間に毛布を蹴り、それからかなりの時間が経ってしまったようだ。足先が悴んでいるのが分かる。
これでは浅い夢も見られない。諦めてカーテンを開き、洗面所へ向かった。
冷たい水で顔を洗う。
キュッと気持ちが引き締まる。
鏡の中の自分と目を合わせ、今日も固く心に誓った。
「何が起きても、冷静に」
心が揺れ動かないようにしよう。
穏やかならざる日を、少しでもマシなものにするために。柔く拙く、生きるにはあまりにも脆い心を、保つために。
これは、平日の朝の誓い。独りだけの静かな儀式。
鏡の中の自分は私を見つめている。私もまた、鏡の中の自分を真っ直ぐに見つめている。鏡中の黒い瞳孔を見据えて、ただ、強くあれ、と願った。
今は耐えることしか出来ないのだから。
いつもより温度の低い洗面所。そこには、決意と静寂だけが存在していた。