またやってしまった。
書庫の整理をしていたら、年季の入ったスクラップブックがバラけて中身が床に散らばってしまった。
明かり採りの小さな天窓から射し込む陽に、埃がチリリと輝きながら舞い上がる。
黄ばんだ紙面を日付順に重ねていきながらも、ついつい記事の内容に目が行ってしまう。
植物園で珍しい花が咲いた、農場で双子の仔牛が産まれた等、取り留めのない日常の一コマのような記事ばかり。
君が生まれる前の日付なので、ご両親の何方かの物なんだろう、と思いながら一枚ずつ拾っていく。
と、サーカスのライオンが脱走した、という記事の次、色褪せたセピア色の写真が数枚。
どの写真も、生まれたばかりの赤ん坊の君が写ってた。
……貰っておこう。
テーマ「無垢」
祖国は既に遥か水平線の彼方に。
空港の売店で買ったサンドイッチをベンチに座って齧る。
かなりパサパサしたソレを共に買ったカフェオレで胃の中へと流し込んで、目の前を行き交う人波をぼんやり眺めた。
祖国とは異なり人種も服装も実にカラフルで、見ていて飽きない。
喧しい……、否、エネルギッシュでパワフル。
マイナス思考は祖国に置いてきた筈だろうと自分に言い聞かせて、残りのサンドイッチを口に押し込んでいると、頭上に影が落ちた。
指定どおりの色のスーツを着ている。
待ち人来たれり。
カフェオレ片手にベンチから立ち上がると、逆光でよく見えない相手に向き直る。
「はじめまして、あなたが――」
テーマ「終わりなき旅」
どうしようもないんだよ。
君か、私か、どちらかが死なないといけないんだ。
だから私は、君に生きていて欲しかったんだけど。
君は私に生きていて欲しいと、願ってしまったから。
私達は“今日”を繰り返すことになったんだ。
でも、私は、この状況に満足してる。
この決して終わることのない“今日”に。
だって、大好きな君とずっと一緒にいられるから。
いま私、とっても幸せなの。
ねえ、あなたは?
テーマ「ごめんね」
曇りだから、と油断して日焼け止めを塗らずに過ごしていたら、まだ初夏だというのに腕が縞々になった。
困ったことだ、これでは日焼け止めを塗ることが出来ない。
縞々日焼けを維持してしまうことになる、それでは夏の間中笑い者だ絶対に嫌だ。
どうしたものか、と悩んでいたら日焼け止めクリームを手にした君が隣にやって来て、私の腕を取ると縞々に日焼けした所だけにヌリヌリと塗りだした。
テーマ「半袖」
風呂上がりに何気なく見ていたテレビドラマのせいで、深夜だと言うのに腹が減ってしまった。
ラザニアに、お好み焼きに、ピザ。
そして、ドラマの合間にはビールのCM。
この時間帯に放送して良いと思っているのかっ、と手近にあったクッションを握り締めながらも視線はテレビに釘付け。
意味もなくご飯を食べているドラマ、最近多くない?なんてSNSにポストして。
気がついたら既に朝、テーブルの上に宅配ピザの空き箱と缶ビールが乗っかっていた。
「月に願いを」