しじま

Open App
1/10/2024, 6:32:30 AM

 ソファでうたた寝をしている君の頬に睫毛が一本。

クルンと綺麗にカールして、照明の淡い光にキラキラ輝く毛先。

起こさないように、そっと指を伸ばしながら。

 ずっと君が笑顔でいられますように、と心の中で願って。

しっとりスベスベの君のほっぺたから睫毛を抓みとった。

テーマ「三日月」

1/8/2024, 4:57:46 PM

観葉植物を育てていたりすると、好きな植物のことを聞かれることがある。


とても困る。


特に「一番好きな花は?」と聞かれると、返答は後日で良いか?と返したくなる。


一番なんて、とてもじゃないけど選べない。


キングプロテア、月下美人、鳳凰木、ヒスイカズラ、ヒオウギソウにヒメツルソバ。

そこらへんの雑草から植物園や花屋にしか無い花まで、なんだって好きだ。


その中から、たったの一つだけなんて……無理、ツライ。


とりあえず万人受けしそうな花の名前を言うけどね。


パッションフルーツとか。

テーマ「色とりどり」

1/6/2024, 5:14:43 PM

 あっという間に、私のお正月は終わり。

二週間ぶりのYシャツ、ヒヤッと冷たい袖に腕を通すと、ゆるふわ正月気分だった脳が徐々に仕事モードになっていくのを感じた。

スーツは男の戦闘服。

なんて言葉があったよね、と思い出しながらYシャツのボタンをプチプチと閉めて、お気に入りの柄のネクタイをクローゼットから取り出すとセミウィンザーノットで手早く結んだ。

ソックスとスラックスを履いて、スリッパをパタパタ言わせながら、リビングのドアを開ければ味噌汁の良い匂い。

 テーブルにきちんと並べられた二人分の朝食、お盆を持ったままの君が「おはよう」と笑いかけてくる。

しあわせ。


 幸せだなあ、ホカホカと湯気の立つ味噌汁のお椀に口をつけながら、私は一笑した。

テーマ「君と一緒に」

1/4/2024, 11:41:44 AM

私は「できた大人」でも「潔い人」でもないから。

もしも君に、私よりも大切な人が出来てしまったら。

きっと、私は「さようなら」が出来ないから。

君を閉じ込めて、逃げてしまわないように縛りつけて。

私だけのものに、私のためだけに。

君のきれいな手足を、両目を潰してしまう。

、かもしれない。

わからない、その時にならないと。

もしかしたら、本当に「その時」になったら。

私は、君の幸せを祝えるだろうか。

テーマ「幸せとは」

1/4/2024, 6:44:54 AM

 元日の朝七時、君の叫び声に叩き起こされた。

新年早々何事かと大きな欠伸をしながら布団から這い出て、未だ君の叫ぶ声が聞こえるリビングへ向かう。

リビングのソファには、パジャマ姿の君が突っ伏していた。

ソファからはみ出た足先を魚みたいにビチビチさせながら、ブツブツと何か呟いている。

 ……寝過ごしたか。

ドンマイ、と君の肩をひと叩きしてローテーブルの下のラグの上に転がっていたスマホに手を伸ばした時。

視界の端に光を感じて、そちらに目を向ける。

開け放たれたカーテンの先、雲一つない澄んだ広い空が橙色に輝いていた。

おお、初日の出〜、と両腕を伸ばしながら窓辺に寄っていき、ほんのりと暖かい朝陽を浴びて。

 ほら初日の出。

スマホに反射させた朝陽を、ソファに突っ伏したままの君に照射した。

テーマ「日の出」

Next