ソファでうたた寝をしている君の頬に睫毛が一本。
クルンと綺麗にカールして、照明の淡い光にキラキラ輝く毛先。
起こさないように、そっと指を伸ばしながら。
ずっと君が笑顔でいられますように、と心の中で願って。
しっとりスベスベの君のほっぺたから睫毛を抓みとった。
テーマ「三日月」
観葉植物を育てていたりすると、好きな植物のことを聞かれることがある。
とても困る。
特に「一番好きな花は?」と聞かれると、返答は後日で良いか?と返したくなる。
一番なんて、とてもじゃないけど選べない。
キングプロテア、月下美人、鳳凰木、ヒスイカズラ、ヒオウギソウにヒメツルソバ。
そこらへんの雑草から植物園や花屋にしか無い花まで、なんだって好きだ。
その中から、たったの一つだけなんて……無理、ツライ。
とりあえず万人受けしそうな花の名前を言うけどね。
パッションフルーツとか。
テーマ「色とりどり」
あっという間に、私のお正月は終わり。
二週間ぶりのYシャツ、ヒヤッと冷たい袖に腕を通すと、ゆるふわ正月気分だった脳が徐々に仕事モードになっていくのを感じた。
スーツは男の戦闘服。
なんて言葉があったよね、と思い出しながらYシャツのボタンをプチプチと閉めて、お気に入りの柄のネクタイをクローゼットから取り出すとセミウィンザーノットで手早く結んだ。
ソックスとスラックスを履いて、スリッパをパタパタ言わせながら、リビングのドアを開ければ味噌汁の良い匂い。
テーブルにきちんと並べられた二人分の朝食、お盆を持ったままの君が「おはよう」と笑いかけてくる。
しあわせ。
幸せだなあ、ホカホカと湯気の立つ味噌汁のお椀に口をつけながら、私は一笑した。
テーマ「君と一緒に」
私は「できた大人」でも「潔い人」でもないから。
もしも君に、私よりも大切な人が出来てしまったら。
きっと、私は「さようなら」が出来ないから。
君を閉じ込めて、逃げてしまわないように縛りつけて。
私だけのものに、私のためだけに。
君のきれいな手足を、両目を潰してしまう。
、かもしれない。
わからない、その時にならないと。
もしかしたら、本当に「その時」になったら。
私は、君の幸せを祝えるだろうか。
テーマ「幸せとは」
元日の朝七時、君の叫び声に叩き起こされた。
新年早々何事かと大きな欠伸をしながら布団から這い出て、未だ君の叫ぶ声が聞こえるリビングへ向かう。
リビングのソファには、パジャマ姿の君が突っ伏していた。
ソファからはみ出た足先を魚みたいにビチビチさせながら、ブツブツと何か呟いている。
……寝過ごしたか。
ドンマイ、と君の肩をひと叩きしてローテーブルの下のラグの上に転がっていたスマホに手を伸ばした時。
視界の端に光を感じて、そちらに目を向ける。
開け放たれたカーテンの先、雲一つない澄んだ広い空が橙色に輝いていた。
おお、初日の出〜、と両腕を伸ばしながら窓辺に寄っていき、ほんのりと暖かい朝陽を浴びて。
ほら初日の出。
スマホに反射させた朝陽を、ソファに突っ伏したままの君に照射した。
テーマ「日の出」