生まれる前から全否定されてきたので、今更どうにかしようなんて考えてなんかいない。
楽しいだとか、嬉しいだとか、そんなものはいらない。
美味しいものが食べたい。
ブランド物の服やアクセサリーが欲しい。
そんな汚らわしい欲も必要ない。
地位も、名誉も、金も、何もかも、どうでもいい。
無感動にこの場に居るだけ。
このくだらない世界が終わるまで。
テーマ「カーテン」
月がとても綺麗だから。
ずっと昔に居なくなってしまった君のことを思い出す。
月の光のような美しい銀の髪を靡かせて、ふわりと微笑む君。
愛しい人。
ずっと一緒にいられると信じていたのに。
ある日突然、君は居なくなってしまった。
愛しい人、今は何処で、何をしているのだろうか。
月がとても綺麗な夜に、私ひとり。
君のことを思いながら目蓋を閉じる。
テーマ「涙の理由」
どこもかしこも極小住宅に変わってしまって、大きな庭のある家や凝った植栽のある住宅が無くなってしまった。
面白みのない家々、外に飛び出したムダにツルピカな車の反射がウザい。
これからも住居の極小化が進むのだろうか?
今作られた極小住宅を更に何分割かして家を建てて、またその家を更に分割して、また分割して、さらに分割していったら……。
棺桶サイズの家が出来てしまうのでは?!
なんて、バカなことを考えながら、君の待つ家へと帰る。
テーマ「ココロオドル」
モゾモゾと腕の中で君が動く気配がして、反射的に腕に力を込めた。
「ぐふぅ」と何やら苦しげに息を吐きながら起きた君に、気づかれないように笑う。
腕の中から出ようとモゾモゾモゾモゾ、しばらく動いていたが諦めたのか動かなくなった君。
すぴすぴ、と寝息をたてる君の幸せそうな寝顔に癒やされながら、私もまた目蓋を閉じるのだった。
テーマ「束の間の休息」
リングの上で馬鹿でかいアナコンダに全身を締め上げられる。
メキメキと鳴る背骨、生温かいアナコンダの身を必死でタップ。
「ぐえぇ」という自分のうめき声にハッと目を開けた。
カンカンカンッという音が聞こえたような気がしたが、どうやら夢だったようだ。
よかった、寝起きのぼんやりした頭でそう思いながら起き上がろうとして。
背後から回されていた君の両腕に起床を阻まれた。
……さて、もう一眠りするかな。
テーマ「力を込めて」