眠れないほど。
眠れないほどのこと?
そうあなたは言うけれど、おかしいのかな。
私にとっては眠れないほどのことでも、あなたは違う。
逆に、あなたの眠れないほどの一大事は、私にとってはどうなのかな。
人それぞれ違うのに、どうして。
共感を求めているわけではないけれど、
きっと無意識に『あなたはそう思うんだね』と受け止めてほしいんだろう。
あなたはさも、それが全世界の意見かのように否定する。
あなたのその自分の常識=世界の常識である自身の強さはどこから来てるの?
私が思う、『みんながみんな同じ意見持つわけ無い』というのもただの決めつけなんだろう。
『夢と現実』
目が覚めたから、ここは現実。
悪夢をみていた。
逃げたい逃げたいと足掻いて目覚めた世界。
信じて疑わなかった。
ここが現実の世界だと。
─いつもの朝の風景。
どうやら深夜に目が覚めたらしい。
もう少し眠ろう。
ガチャリ
扉が開く音が聞こえた。
鍵を閉め忘れた?
いや、でも、必ずチェーンもしてたはず。
大丈夫大丈夫。
私は再び布団に潜る。
すると、丸めた身体の上が何か、重い。
覆いかぶさる感覚。
これは、金縛り!
だってこんな時間に誰が部屋に入るの?
頭の中は大忙し。
夢なら早く覚めて…!
絶対夢だと信じ、目を瞑っても一向に景色が変わらない。
圧迫され続けてなんだか息も苦しい。
意識が遠のいた。
──
目が覚めると、また、ベッドの上だ。
すぐさま部屋の鍵を見に行く。
うちは1Kの小さな部屋だ。
部屋数も少なく、同じ階に2部屋のみ。
分かりやすいので部屋を間違えることもない。
うん、しっかりチェーンもかかってる。
寝よう。
『無駄だよ』
その声とともにまた、今度は確かに人。
首に手をかけられていた。
知らない男のひと。
さっきも夢ならきっとこれも夢なんだ。
早く夢から覚めて。
苦しさがどうしてこんなにリアルなの。
──
目が覚めた私は、スマホ、目覚まし時計を見比べる。
ここは狂った世界。
死ぬまで目が覚めないどころか、死んでループしている。
どうしたらこの悪夢から逃げられるか?
夢の中で夢を見続けているらしい。
あと少しであの男が現れる。
部屋の窓を開ける。
自分で死んだらどうなるのだろう。
─もし、これが今度こそ現実世界だったら?
永遠に抜け出せない
良い人・悪い人の境界って、どこなんだろう。
他人だと、自分にとっての心地良い相手、嫌な相手だろうか?
だとすると、自分が良いか悪いかを知る方法はなんだ?
自分のやること成すこと、自らが動いている自分の意志は相手にとって悪にもなり得る。
自分の感情に背いてやる行為が相手にとっていい場合もある。
自分にとって、自分は良い人でありたいと思いながらも私はその間に板挟みになっている。
万人受けをねらってしまう自分が嫌いだ。
それでさえ、嫌う人が出るのなら、
自分の好きなように行動したほうがいいのに。
わかっているけれど、刷り込まれてしまったのだ。
物心ついた時からの何気ない会話。
『変わってるね』
『そんなこと思いもしなかった』
『面白い考えしてるね』
『そんなこと考えるのあなたくらい』
全てが否定されているわけでは無いのに、私はこの手の言葉が酷く苦手で、(普通はどう感じる?)と考えながら返答を考えるようになってしまった。
それもごちゃごちゃといろんな返答を思いついてしまうので、レスポンスがゆっくりだ。
結果、まとまらずに変な答えになりがちなのだが。
今はみんなと同じになれないと認めながらも、
いまだにその足掻き癖が抜けないでいる。
今の私を、それで良いと思ってくれるひとと過ごす中でもまだ……。
いっそ、振り切って嫌われたい。
ほんとに面倒な性格だ。
「泣かないで」
ベンチに座って、何時間経ったかわからない。
自分の人生、思い返すとあまりにもひどいものだ。
「何者かになりたかった。」
それは、なんでもよくて。
「今何してるの?」という問いに、誇れる回答が無い。
すべてが中途半端である。
こうなりたくなくて、必死でしがみついていたことも一度手放せば大したこと無かった。
それからは自由に生きた。
自由っていいな、やりたいことぜーんぶ、叶えた。
叶えたら、急に生きる意味は何?と自問自答。
私にはなにもない。
時間があっても、お金があっても、やりたいこと、ないのだ。
それは私の中身が空っぽなのだと突きつけられているようで。
胸の奥がキュッとする。
自分で自分を攻撃してしまう始末。
部屋でそんなことを悶々と考えていたらいよいよ終わりだ、と家から出て今ここにいる。
近所の公園のベンチ。
まだ昼間で賑わっている。
見渡せる程度の、ちいさな公園。
端っこのほうで、遊具で遊ぶ子どもたちを眺め、その子供らを見守る母を眺め、自分を眺める。
─だめだ、何を見ても比べてしまう。
比べ始めたらそれはそれは深い沼に落ちていく。
周りは私のことを羨ましいと言う。
隣の芝生は青いってやつなのに。
恋愛のときめきは欲しいくせに
愛ってよくわからない。
嫌われることが怖すぎて、はじめから好きになんてならなければよかったと後悔する恋愛ばかり。
それならばと、適当な相手と適当に付き合う。
ただ時間と精神をすり減らしただけだった。
あの時出会ったあの人と、もしも…なんて妄想が止まらなくなる。
はあ…いつまでやれば気が済むの?
この涙が3リットル溜まったら、過去に戻れたりしないかなとか馬鹿みたいな願い。
誰かに必要とされたいけれど
期待をしてほしくない。
誰も私を見ないでと、矛盾する心。
あーあ、もう帰ろ。
いつの間にか空が暗い。
「泣かないで」
ふいにどこからか、頭に手を乗せられた。
──誰?
そこにはとてつもなく懐かしい顔が、あった。