「泣かないで」
ベンチに座って、何時間経ったかわからない。
自分の人生、思い返すとあまりにもひどいものだ。
「何者かになりたかった。」
それは、なんでもよくて。
「今何してるの?」という問いに、誇れる回答が無い。
すべてが中途半端である。
こうなりたくなくて、必死でしがみついていたことも一度手放せば大したこと無かった。
それからは自由に生きた。
自由っていいな、やりたいことぜーんぶ、叶えた。
叶えたら、急に生きる意味は何?と自問自答。
私にはなにもない。
時間があっても、お金があっても、やりたいこと、ないのだ。
それは私の中身が空っぽなのだと突きつけられているようで。
胸の奥がキュッとする。
自分で自分を攻撃してしまう始末。
部屋でそんなことを悶々と考えていたらいよいよ終わりだ、と家から出て今ここにいる。
近所の公園のベンチ。
まだ昼間で賑わっている。
見渡せる程度の、ちいさな公園。
端っこのほうで、遊具で遊ぶ子どもたちを眺め、その子供らを見守る母を眺め、自分を眺める。
─だめだ、何を見ても比べてしまう。
比べ始めたらそれはそれは深い沼に落ちていく。
周りは私のことを羨ましいと言う。
隣の芝生は青いってやつなのに。
恋愛のときめきは欲しいくせに
愛ってよくわからない。
嫌われることが怖すぎて、はじめから好きになんてならなければよかったと後悔する恋愛ばかり。
それならばと、適当な相手と適当に付き合う。
ただ時間と精神をすり減らしただけだった。
あの時出会ったあの人と、もしも…なんて妄想が止まらなくなる。
はあ…いつまでやれば気が済むの?
この涙が3リットル溜まったら、過去に戻れたりしないかなとか馬鹿みたいな願い。
誰かに必要とされたいけれど
期待をしてほしくない。
誰も私を見ないでと、矛盾する心。
あーあ、もう帰ろ。
いつの間にか空が暗い。
「泣かないで」
ふいにどこからか、頭に手を乗せられた。
──誰?
そこにはとてつもなく懐かしい顔が、あった。
12/1/2023, 12:27:38 AM