カチ、コチ。カチ、コチ。
今日も変わらぬリズムを刻む。
カチ、コチ。カチ、コチ。
リズムに合わせてステップを踏む。
カチ、コチ、ツタタン。
カチ、コチ、タカタン。
私と時計と、
2つの音が合わさって、
たちまち素敵な演奏会。
貴方の針がてっぺんを指すまで、
こうして2人で踊りましょう。
テーマ『時計の針』
その時、
クリームソーダがパチンと音を立てて。
そしたら、
あっという間に桃色の海に沈んでいたの。
パチパチと弾ける泡越しに、
貴方の姿が浮かんでは消えて。
私は瞬きも忘れて見入っていたわ。
一際大きな泡が弾けたら、
気づけばいつもの喫茶店。
向かいの貴方が心配そうに私を見ていた。
そっか、これが“恋”なのね。
テーマ『溢れる気持ち』
「私とキスしたらきっと病気も治るよ!」
なんて君が居なくなるのが辛くて、
適当なウソをついた。
押し潰されそうな心を誤魔化しただけ。
だったのに。
実際キスしたら何故か君は元気になって、
やりたかったこと2人で沢山出来た。
──まあ、結局事故で先に居なくなっちゃったけど。
棺の中で眠る君の乾いた唇に、
そっとキスをする。
……やっぱり物語みたいに上手くはいかないや。
テーマ『Kiss』
長い時間眠って、
目覚めたら世界は様変わりしていて。
身内も居るわけないし、
退屈だったから、
酒場で出会った奴と行動を共にした。
そいつは感情が豊かで、
からかい甲斐があって。
退屈なんて感じる暇もないくらい、
毎日笑って過ごした。
人生に希望を見出せず眠りについたが、
なるほど。
1000年先も悪くないかもしれない。
テーマ『1000年先も』
戦地へ旅立つ幼馴染に、
勿忘草の刺繍の入ったハンカチを渡した。
花言葉なんて興味のない人だったから、
きっとその意味には気づかないだろう。
少しだけ躊躇っていたけれど、
ちゃんと受け取ってくれた。
……お別れの前に、渡せて良かった。
後悔があるとするなら、
直接言えなかったこと。
〜〜〜〜
故郷へ残す幼馴染が、
勿忘草の刺繍の入ったハンカチをくれた。
鈍感な俺でもこの刺繍の意味くらいは知っているよ、
前に君が話してくれただろう?
未練を断ち切るつもりでいたけれど、
結局受け取ることにした。
……これでお別れなんて、後味が悪い。
後悔のないよう無事に帰って、
直接言わなければ。
テーマ『勿忘草』