saiki.k

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8/26/2023, 3:24:02 PM

「んなこと日記帳にでも書いておけよ!」

と君が言うものだから、僕は思わず笑ってしまった。

「日記なんて書いてないよ。てか俺が書いてると思う?」
「思わないけどー!いちいち覚えてらんねぇのよ、先の約束なんて!」

なんだかなー、そんなに忘れちゃうようなことかな。10年ぐらい経ったらまたここに来たいねってこと。この目の前の美しい景色、それを君ともう一度見たいってこと。

「わざわざ約束なんかしなくても、また来ればいいじゃん。いつだって思い出した時に、2人で。また」

なんだ、照れ隠し?
そう言って不貞腐れる君が君がきっと、僕の日記帳。



私の日記帳


8/25/2023, 1:07:56 PM

2人組ずつ組まされると俺はほぼ必ずと言って良いほど君と向かい合わせになる。君は俺より少し小さい、ほんの少し目線が下がる。君は少しだけ俺を見上げ、そしてほんのちょっと眉を顰めるを
何見てんの? 何も見てないよ。
嘘。君を見ているよ。
嘘。本当は見てないくせに。
互いに口には出さない。想像の会話。妄想の君。
いや。嘘。
実際口にしても同じことを思うだろうな。
それほどまでに俺と君は。

なに?

「…なに?」
君が俺を見上げて想像通りに言うものだから、俺はただただ微笑んだ。


向かい合わせ

8/25/2023, 1:24:52 AM

君はいつも、誰かにその笑顔を向けている。
「…あのシュートマジすごくない?あのあとさー」
僕にはわからないサッカーの話題。同じ世界が見たくて、あの笑顔を真正面から見たくて何度か試合を見てはしたものの、人の好きずきは僕には決められない。僕の中の人が面白くないと言ったら、それはもう無理なのだ。僕にサッカーのことはわからない。

ねぇ、僕の中の中の人。僕にサッカーを面白がらせてよ。彼のことをこんなに思う気持ちを無くさせてよ。
「…やるせないな」
「なにが?」
ほんのちょっぴりそう口にしたら、君はサッカーの話を中断して僕に振り返ってそう言った。
そういうところなんだよ。
そこなんだよ。
やるせない、この気持ちは…。


やるせない気持ち

8/24/2023, 5:12:38 AM

「そうだ、海へ行こう」
唐突に君は言った。思いつきは彼のお箱。呆れながらも僕は答える。
「そうだね、海へ行こう」
どこがいいかな。青い海がいいな。白い雲と青い空と。
君はにこにこ笑いながらそう言って、大きく伸びをした。
「海に行ったら俺は真っ先にドブンと飛び込むんだ。君はそれをケタケタ笑うだろう。そうしたら俺は怒ったふりをして海の水を君にかけてやるんだ。その水はとても冷たかろうよ」
「そうだね、きっと冷たい。僕もきっと怒ったふりをするだろう。そしてケタケタ笑うだろう。いつだって君の、思う通りに」
その幸福な光景を思い浮かべて、そして僕らはケラケラと笑った。
決して行けない海を思って、ケラケラと笑ったのだった。

海へ行こう