遠くの空で、ゴロゴロと雲が怒ってる。
それに連なって自分の心臓もゴロゴロと唸る。
自分の胸の音がうるさい。早く止まないかなぁ。
山の向こうの遠雷が過ぎるのを、僕は気長に待っている
時計を見た。もうこんな時間か、、、
こんなところに一人で何やってるんだろう。
僕はマンションの裏山の開けたところでぽつんと座っていた。街はとくとくとあかりが消えていく。
あーあ。こんなことしてたら、彼女に嫌われちまうな。
僕はポケットからタバコを取り出し、火をつける。風が吹いて、ライターの邪魔をする。まるで体に悪いからタバコを吸うなと言わんばかりにしつこい。
オカンかよ。
やっと火がつきタバコから経つ煙を無心に目で追うと、満面の笑みを浮かべた星空が輝いていた。
贅沢だな。
この瞬間だけ、この空は僕のものになった気がした。
湖が魅せる世界には、僕と同じ、ひとつの光がぽつんとあった。
またこの時期がやってきた。
同じ空気のようで、違う景色のこの空間の中には、僕と同じ思いを持つ人が何百と居る。
本当は来て欲しくないのに、待ち疲れたように僕は嘘をつく。
でも僕はみんなと同じように、水でいっぱいになりそうな視界をギュッとつむって、パッと花が咲くように笑うんだ。
次会う時も、笑っていられるように。
あの日、雨が降った日、僕が君に声をかけれてたら、どんな人生になってたかな。
僕はあの瞬間から、なんの引き金もなく、思い出してしまうことがある。君の孤独で寂しそうな目、綺麗な顔のはずなのに、それが分からないほど顔がグシャグシャで、こんなにも雨水を憎いと思ったことはないだろう。僕は人と話すことが苦手で、女性と話すなんて尚更だった。恥ずかしさで声が出なかったくせに、前へ進む足はどんどん早くなるばかり。振り返った時に見たあの横顔は、この先もずっと頭から離れないんだろうな。
なぜ泣くの?って聞かれたから、なんで泣かないの?と聞いてしまった。こんな簡単な一言で、君の視界から僕は消えてしまうんだから。
嗚呼、言葉って不快だ。