飛べない翼はいらない。だって大空に羽ばたくのを夢見て羽を広げたのに。他の仲間たちはあんなに綺麗に舞っているのに。いっつも僕だけ仲間はずれ。もう、やだよ。こんなことになるくらいなら最初から翼なんていらなかった。神様はどうして僕にこんなものを送ったの。僕だって大空を自由に飛び回りたいよ。なのに、なんで。神様は意地悪だ。僕にこんな理不尽なものを贈るなんて。少年の顔から涙が溢れた。
ペンギンは飛べない翼を床につけてうなだれていた。
これはとある水族館のペンギンの話。
ペンギンは今日も翼を広げて飛ぶ練習をする。
大空を夢見て。
zene
いくらたくさんの富を持っていたとしても、たくさんの人の愛されたとしても、それらは全て死んでしまえば意味を成さない。しかし、本当にそうだろうか。たくさんの富を持っていたらあの世で神様に認められるかもしれない。たくさんの人に愛されて死んだのなら、あの世でも周りに人が集まって来るかもしれない。小さな努力だっていつかは結果に繋がるかもしれない。つまるところ「無意味なこと」というのは人生においてほとんどないのだ。人生はまだ長い。きっと人生のうちで何度も怠けることはこれからもあるだろう。だが、それは「怠惰」などでは決してないということを覚えておいて欲しい。
zene
生まれた環境も、生きてきた年月も全然違うけれど、私たちはこうしてちゃんと巡り会えてる。これって奇跡じゃないかな。お互いの名前すら知らないけどそこから始まる物語もきっとある。そう信じてるよ。君となら唯一無二の関係になれると思ってる。
ふふふ。あなたとわたしが巡り会えた奇跡に乾杯!!
zene
今日私は失恋した。大好きな先輩が私の親友に告白しているところを見てしまったのだ。私は憂鬱な気持ちになりながら下駄箱を出た。そうしてとぼとぼと家路に向かっているときだった。
ぽつ、ぽつと何かが降ってきた。雨だと気づいた時にはもう遅かった。慌てて傘を探すが、見当たらない。仕方ないと私は走り出した。雫が背中を伝ってくる。それは優しい、優しい雨だった。雫を通じて雨粒の柔らかさが伝わってくる。慰めようとしてくれてるのかな。そう思うと心がふっと暖かくなったように感じた。今日は思いっきり遠回りをしよう。たくさん濡れてから帰ろう。そう私は心に決めた。
zene
真っ暗な闇の中で私は夢を見た。君が救ってくれる夢。それは私にとって一筋の光みたいでー。とっても眩しかった。けれど、手を伸ばしても君には届かない。当然、届くはずもない。そんなこと誰よりわかっているのに淡い期待を抱いてしまう。いっそのこともうこのまま堕ちてしまおうか。深く、深くもっと深いところまで堕ちて誰にも見つからないままひっそりと死んでしまおうか。そんなことさえ思った。
それでも手を伸ばし続けた。そして彼が一瞬こちらを見たのだ。もっと彼を見たい。そう思う少女の気持ちとは裏腹に体はどんどん沈んでいく。「時間切れだよ」しわがれた声が脳に響く。ああ、そっか。ここまでなんだ。少女は悲しげに自分から沈んでいった。
これはとある人魚の話。彼女は誰にも愛されることなく、静かに沈んでいった。
たった一つの光さえ見つけられないまま。
zene