『手ぶくろ』
「寒くないの?」
白い雪が空から舞い落ちる帰り道、君がこてりと首をかしげた。
君の瞳は僕の剥き出しになっている手に向けられている。
「ちょっと寒いかな」
夕方とはいえ吐く息が凍りそうなほどに冷えこんでいる。
露になっている首筋に吹き付ける風に、不意にくしゃみが出た。
「手、繋ぐ?」
手ぶくろに覆われた君の手がひらりと振られる。
「……え」
とくりと胸が鳴った。
君の手に僕の手が重なることを想像する。
「嫌ならいいんだけど」
僕が嫌だと思ったのか、君が早口で言葉を付け加える。
それに被せるように首を振った。
「繋ぎたいです」
「なんで敬語」
君が笑った。
手ぶくろを取って、君の手が僕に差し出される。
僕よりも小さいその手を握った。
「ちょっとでもあったかくなった?」
「うん。ありがとう」
手の冷たさなんて気にならないほどに上がった体温には気づかないふりをして、君の手を柔らかく握りしめた。
『変わらないものはない』
変わったね、なんて呟いた私に変わらないものはないよ、なんてやけに諦めの色を滲ませて笑ったあなたが、頭から離れなかった。
『クリスマスの過ごし方』
今日はウニの発生を研究して、それを発表してました。
めっちゃ楽しかったです。
個人的にはプリズム幼生ちゃんがかわいかったです。
あと、クラスの推しとも喋れました!
顔よし、声よし、性格よし、頭よしで完璧すぎて怖いです。君は出来杉くんかな?
その後、母とご飯食べました!
理想とはほど遠いけれど、結構好きなクリスマスの過ごし方でした。
『イブの夜』
雪の花が視界に舞って、クリスマスイブの夜を白く染め上げる。
吐く息すらも柔らかに凍って、それでも隣で笑う君のおかげで体温は燃えそうなほどに熱い。
今にも触れ合いそうな手だって、君との体温を共有していた。
「綺麗だね」
「そうだね」
眩いほどのイルミネーションと紅く染まった君の頬だけが、やけに瞳を占領する。
不意に交わった視線が鼓動を高鳴らせた。
その胸のときめきのまま君の名を呼ぶ。
君の唇がどうしたの、なんて形作った。
「好きだよ」
君の瞳が大きく開かれる。
唇が戦慄いて、君の動揺を如実に伝えた。
触れれば切れてしまいそうなほどの緊張に包まれた空気が、君の言葉で揺れる。
「私も好きです」
心に火が灯ったような気がした。
君の瞳が僕を射貫く。
二人の手が触れるまで、その目をそらすことはなかった。
『プレゼント』
婚約指輪をクリスマスプレゼントにするなんてありふれているかもしれないけれど、あなたの幸せと、笑顔と、それに付随する私の幸せを願って、その瞳を見つめた。
プレゼントといえばなんですけど、クラスの男子から好きな子へのクリスマスプレゼントを相談されて一緒に考えてたら自分がウニの研究をしてるのが虚しくなってました。いいんですよ、推しカプが幸せであれば。
来年があるよって自分のこと励ましてます。