『冬のはじまり』#98
冬のはじまりを予感させる冷たい風が吹いた。
息が白く凍って、そのまま静かに空気と混じる。
寒いねって笑う君がやけに愛おしくて、好きだよ、なんて呟いた声すらも甘やかに凍ってしまいそうだった。
はじめて君と感じた冬のはじまりはいつもより少し暖かいような気がして、他の季節も君と巡るのが楽しみになった。
寒いですね。
わりと雪降る地方なんですけど寒がりすぎて着ぐるみパジャマに毛布にエアコンにストーブ使ってます。好きな着ぐるみはセイウチです。
みなさんも風邪にはお気をつけください。
『終わらせないで』
BLです。お気をつけください。
どうか、この恋を終わらせないで。
かつてないほどに真剣な瞳をしたあなたに、柄にもなく弱音が溢れる。
半歩後ずさった身体が、冷たい壁に触れた。
「……月島」
今にも切れそうなほどに張りつめた空気が、あなたの言葉で揺れる。
震えた声とは反対にまっすぐに見つめる眼差しが俺を貫いた。
「…はい」
「好きだ」
空気の色が変わった。
心臓が音を鳴らす。
夢か現か、それすらもわからなくなった。
「……え」
「お前のことを、恋愛的な意味で好いている」
顔に血が上る感覚がした。
言葉にならない声が溢れ落ちる。
「お前はどうだ?」
熱を含んだ瞳を向けるあなたに返す言葉は、ずっと前から決まっていた。
ゴールデンカムイより鯉月です。
『愛情』
あなたの幸せを願うこの思いが愛情じゃないのなら、何が愛なのかわからないほどだった。
けっこういろんな人から愛情を向けられて育てられてる自覚があるんですけど、それを返せてたらいいなって思います。
『微熱』
始まりはきっと、微熱みたいな柔い恋だった。
「好きだよ」
自分の口から出た言葉に驚いて、その後すぐに目の前で呆けた顔をしている君を見つめる。
あ、かわいい。じゃなくて。
「……え」
みるみるうちに紅くなるその顔よりも急速度で自分の体温が上がるのを感じた。
「あ、えっと、ちがくて!」
何が違うんだよと言う感じの言い訳を連ねる。
君の顔はまだきょとんとしたままだ。
「私のこと、好きじゃないの?」
「それは好きだよ?」
咄嗟に出た言葉に心の中で頭を抱えた。
いい感じに誤魔化せるところだったじゃん。今。
僕の手と共鳴して震え始めたグラスを放す。
どうにかしないと、と思考を巡らすけれど、出てくるのは浮気男さながらの言葉ばかりだ。
「私も好きだよ」
そんなことを考えていたから、反応が遅れた。
たぶんさっきの君と同じような表情をして君を見つめる。
え、今、何て言った?
「私は君のこと、ラブで好きだよ」
君はどうなの?
世界が揺れる。
空間をいつもよりゆっくり流れた言葉が、僕の細胞に染み渡る。
頭はパンク寸前だけど、次にしなきゃいけないことはわかった。
僕と同じ少し微熱を持っているかのようなその手を握って、熱を宿した瞳を見つめて、もう一度始まりの言葉を紡いだ。
『太陽の下で』
太陽の下で笑うあなたがやけに輝いて見えて、それを表す言葉が恋だということにやっと気づいた。
あなたには太陽の下で生きていってほしいと願っていた。
痛いほどの陽に当てられ、眩しいほどの光に囲まれ、ただひたすらにその瞳に明るいものだけを映してほしいと願っている。