『言葉はいらない、ただ・・・』
言葉はいらない、ただ・・・。
あなたとの思い出をください。
いつかあなたの隣にいられなくなっても、それだけで生きていけるような。そんな記憶を私にください。
『突然の君の訪問』
突然の君の訪問に、嬉しさとか喜びとかそんなものよりも先に驚きがやってきた。びっくりしすぎて一瞬固まる僕に君はくす、と笑いながら定期を差し出す。
「これ、忘れてたよ。明日じゃ遅いかなって、届けに来た」
「あ、ありがと」
少し震える手で定期を受けとる。
君はまた鈴みたいな笑い声を上げて全然、と答えた。
じゃあね、また明日、なんて言いながらローファーの音を響かせて去っていく君を呼び止める言葉を、僕は知らない。
ただただ小さくなっていく後ろ姿を見つめている。
明日は自分から君に話しかけよう、と決意を固めて家に入ったのは実に10分後のことだった。
主人公の純情ボーイが定期を忘れたのは偶然とかじゃなくて明日受け取って君と話す口実になればな、なんて考えてのことでした。
本文中にうまく入れられなくて申し訳ないです🙏
『雨に佇む』
あなたの隣が私である必要なんてないから。
どうか。
あなたが一人で雨に打たれることがありませんように。
いつかの私みたいに、雨の中で佇むしかないなんてことが、ありませんように。
『私の日記帳』
いつ頃からだろうか。私の日記帳にあなたの名前が出るようになったのは。
あ、今日もあなたの事書いてる、なんて思ってたのは束の間で、気づいたらそれが当たり前になっていた。
いつしか私の日常に溶け込んでいたあなたを好きになるなんて、春に花が咲くくらい当たり前のことだったようで。かつて友情として大切に抱えていた想いは、愛情へと形を変化させていた。
気持ちを伝えるなんて到底出来やしないし、あなたと私の想いが同じ温度を秘めているなんて思ってもいないけれど。
たったひとつ。たったひとつだけ。
いつまでもあなたが私の隣で笑っていてほしいという願いを胸に抱いて、今日もペンを走らせます。
『向かい合わせ』
私の向い合わせはいつでもあなただった。
ふとした時に目に入るのは、いつもあなたしか考えられなかった。はずなのに。
幾年ぶりかに思い出してしまったあなたの像を掻き消しつつ、今はもう違う向い合わせを見つめる。
こんな私で、ごめんね。
小さく呟いた言葉は私の口の中で溶けていった。