「買い物行こ」
「急に?」
「そう、急に」
「何買うの?」
「なんでも」
「どこに買いに行くの?」
「街へ」
「街?」
「街へ行こうよ」
「街って、どこの街?」
「どこでもいいよ」
「じゃあ、近いとこ行こう」
「うん」
「ガチャ」
『街へ』
小さい頃から、いろんなふうに褒められてきた
「まるで人形のようだ」
「宝石が生きているみたいに美しい」
「情熱の赤い薔薇のように…」
でも、その言葉の裏はいつも真っ黒
家系がどうとか王族がどうとか、もうめんどくさい!!
そんなことを言って家を飛び出し早1年
今は普通の高校生として暮らしている
友達みんなで遊ぼうって話になって、待ち合わせ場所に着いて真っ先に言われたのが、
「かわいいね、似合ってるよ!」
人形みたいだとか、花のようだとか、そんな洒落た言葉ではないけれど
その言葉の裏には真っ黒なんてなくて、なんだか優しさだけがあるような気がした
今まで聞いたどんな褒め言葉よりも、すっごくすっごく嬉しかった
『優しさ』
「ん…」
なんとなく息苦しくて目が覚める
スマホを見ると表示された光の文字は「23:59」
もう真夜中だ
どうやら息苦しさの正体は体に乗ってきた飼い猫だったようで、ベットの下にある猫用ベッドに移動させる
そんなこんなでもう一度スマホを見ると「0:00」
日を跨いでしまった
高校生である私にとって、こんなに遅く起きていることは大晦日以外には滅多にない
私は徹夜しないタイプなのである
ふと窓の外を見る
そこには星…ではなく曇った夜空があった
愛猫が眠ったことを確認して再びベットに潜る
たまにはこんな日もいいかなぁなんて思った
『ミッドナイト』
「あつい、」
そう言って私は空を見上げた
忌々しいほど眩しい青空
入道雲が存在感を増していく
そして太陽
気持ちの問題か、とてつもなく大きく見える
太陽光で私の網膜を傷つける
実際に傷ついているのかは知らないが
「おーい!」
目の前に人影が現れる
突如として光が塞がれる
逆光のせいで何も見えない
「こんなとこにいたのかー!」
「一緒に帰ろー!」
逆光のせいで顔は見えないが、心なしか笑っている気がした
『逆光』
「はぁー」
外が寒かったので、なんとなく息を吐く
息が白い
いよいよ冬だなぁなんてくだらないことを考える
雪でも降れば楽しいのにこの地域は雪があまり降らない
一昨年くらいにちょっと降ったけな
とす、とす、と歩き出す
周りには誰もいなくて、私の足音だけが響く
冬は寒いし、雪も降らないし、少し不安にはなるけれど
私はこの、冬の静けさが好きだ
『冬の静寂』