なみ

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5/9/2025, 1:49:45 PM

注)BLです。苦手な人は見ない様にお願い致しますm(_ _)m


「夢を描け」

街の雑踏が眼下に広がるコーヒーショップの2階でボーッと1人アイスコーヒーを飲みながら時間を潰す。

……いろんな人が居るなぁ……
……楽しそうだなぁ……

右に左に忙しなく移動している人たちを眺めていると、無意識に手を繋いで楽しそうなカップルに目が留まる。

……いいなぁ……

見下ろしているので表情は見えないのだが、きっと幸せそうな笑顔で楽しい会話をしている事だろう。

……俺に恋人なんて出来るのかな……

心の呟きがズンと来る。
恋はしている。恋は……。
でも相手がなぁ……。
姉と一緒に男性アイドルに夢中になった時に気が付いた。
俺って、男性が好きなの?
女性アイドルも可愛くて好きだけど、男性アイドルほど夢中になれない。
テレビ越しでも目が合った時の高揚感。
体のラインとか性的な目で見ていた事に気付く。

俺には小3から仲の良い友達が居る。
そいつが困った事に距離感がバグってる。
男性が好きと気付いてから意識して仕方ない。
今までどうやってこの距離感でやって来れたのか不思議で仕方ない。
良い奴だから意識してるのがバレて仲が壊れるのが怖い。

物思いに耽っていると手元に置いていたスマホが震える。
悩みの種の友人、郁弥(フミヤ)からのメッセージだった。
内容を見てギョッとする。

ーー今コーヒーショップの2階の窓側の席に居る?ーー
え、もしかしてこの下の人の中に郁弥が居たりする?!
ジッと探してみたけど分からない。
ーー居るよ。けど、見えないでしょ?今どこから?ーー
ーー今日、この辺行くって言ってたから、コーヒー好きだし、居るかなってコーヒーショップ覗いてたんだ。今から合流しに行くーー

え、こっち来るの?!
合流ってこれから一緒に遊べるって事?!
それって……デ、デート?!?!
いや、早まるな、俺!違うから!!

それにしても、この辺遊びに行くって言ったけど、コーヒーショップに居るのを見当付けて探すだなんて……これって、期待しても良い?!?!

都合が良い解釈をしそうになる自分を宥めながらも、自分には叶わないと思っていた夢を描いてしまう。
いいよね、夢見る位は……。

「よっ!隣良い?」
休日のコーヒーショップは混んでいて、人を見つけるのは大変と思うのに、郁弥は難なく俺を見つけて隣の席を確保する。
「この人混みでよく見つけたなぁ。この下に居たんだよな?俺、ずっと下見てたのに全く気づかなかった」
「センサーが違うんだよ」
「何だよ、それ。俺がどこにいるか反応するのか?」
「そうだよ。お前専用のセンサーが俺にはあるんだ」
ドキッとする。
冗談だろうに、俺が郁弥の特別みたいな言い方…。
だから、ダメだって!そう言いながらも先ほど描いた夢に更に2人で幸せそうに笑う姿が追加された。

この夢がどんどん大きくなってキャンパス一杯になったら、抱えきれず告白してしまうかもしれない。

こちらの悩みに気付かない郁弥は手を伸ばし、俺の頭を撫でながら
「寝癖!可愛いなぁ」
と、無邪気に笑った。
俺の夢がキャンパスにいっぱいに描かれるまで、そう時間は掛からないかもしれない……。

              ーENDー


5/2/2025, 12:33:37 AM

「風と」

7/11/2024, 1:18:36 PM

『目が覚めると」

※一つ前のお題です。間に合いませんでした💦
※BLです。苦手な人は読まない様にお願いします🙇


カーテンの間から眩しい光が差し込み、窓の外の鳥の声が聞こえて来る。

目覚ましより先に目が覚めるのは珍しいなと思いながら、目を開けると

「おはよう」

「……?!?!」

「驚かせちゃった?ごめんね、起こして来いって言われたからさ」

朝の準備がバッチリ整っている感じの聖哉《セイヤ》さんがニコニコ顔で言う。

「えっと……。ちょっと待って下さい。今何時ですか?」

寝起きで頭が回らない。

「6時30分だね」

「6時30分……。え、アラーム6時にセットしてるのに鳴らなかった?!」

慌てて、ベッドのサイドテーブルに置いているスマホを取ろうとする。

すると、伸ばした手をソッと握られる。

「アラームはね、一瞬鳴ったんだけど止めちゃった」

テヘッといたずらっ子の様に笑う。

あぁ、こんな天使の様な顔で暴露されたら怒るに怒れない……!

「母さんが蒼汰《ソウタ》を起こして来いって言うから。一応ノックはしたよ。で、起こそうと思ったんだけど、幸せそうな寝顔を見たら起こせなくて……」

「そ、そうですか。いいですよ。6時のアラームでも起きるのは大体6時30分ですし。起こしてくれてありがとうございます!」

「許してくれる?ありがとう。これからは蒼汰くんを起こすのは俺の仕事にするね」

「え、大丈夫、大丈夫です!俺、寝起き悪いし、アラームでいつもちゃんと起きれてるし、放っておいてくれて大丈夫です!」

この整った顔を毎日朝一に見るなんて、そんな心臓に悪い事出来ない!!

両手を振って拒否すると、聖哉さんは目に見えてシュンと項垂れた。

うぅっ!罪悪感……。

「ダメかなぁ?今日は誘惑に負けたけど、明日はちゃんと6時に起こすから」

上目遣いにお願いされる。

あれ、朝起こしてもらうのってこんなに大事な事だっけ?

そう思いながら

「分かりました。じゃあ、明日も宜しくお願いします!」

撤回しないと、一日ずっとシュンとしてそうで、慌てて、訂正する。

はぁ、朝起きたら、聖哉さんが俺の部屋に居るの?

こうして、覗き込まれておはようって言われるの?想像しただけで無理だ……。

まず、俺の寝顔が……。幸せそうって言ってたけど、ただのアホ面でしょ。

明日からは6時よりも前に起きよう。

アラームより遅く起きる事はあってもアラームより先に起きる事はほとんどない俺が誓った。

1階に降りるとパンが焼ける香ばしい香りとコーヒーの良い香りがしていた。

「蒼汰くん、おはよう。昨日は引越しの片付けしたりで、まだ疲れが残ってるんじゃない?朝食はトーストとサラダとコーヒーでいいかしら?和食が良かったら明日から和食にするわよ」

ふんわりとした髪を揺らしながら、ニッコリ微笑む美人は、この度、俺の父親と再婚した新しいお母さん。

聖哉さんは、この美人のお母さんの息子さんだ。納得。

「俺、今まで朝ご飯は食べてなかったので、朝からこんなにしっかりした朝ご飯食べれるの嬉しいです!!ありがとうございます」

「あら、そうなの。育ち盛りだから朝ご飯はしっかり食べてね」

はぁぁ〜、こんな美人の手料理にこんな優しい言葉……父親に大感謝だ!!

席に着いて、トーストを頬張る。

隣からスッと手が伸びて、俺の頬に付いたジャムを長く綺麗な指で掬い取り、

「付いてた」

と、いつの間にか隣に聖哉さんが座っていた。

「唇の端にも付いてる。舐めたいけど我慢」

クスッと笑って俺を見る。

顔に熱が上がるのを自覚しながら、慌ててティッシュを取ってゴシゴシ口を拭く。

「そんなに乱暴に吹くと赤くなるよ」

聖哉さんは、最初見た時は、優雅で聖哉さんの周りだけ時間の軸がゆっくり動いてるのかなって言う程、纏ってる空気が違っていて、長めのサラサラの髪を耳に掛ける姿とか、男女問わず人を魅了して仕方がない存在だ。

そんな聖哉さんは、義弟が嬉しいらしく、顔合わせの時から、ずっと俺にベッタリなのだ。

ふふっと笑った顔も魅惑的で、ドキッとする。

ジャムを付けない様に気をつけても、たっぷり塗ってあるので難しい。

見ると、聖哉さんはサラダとコーヒーだけの様だった。

お母さん、俺が甘い物好きなの知って、ジャムたっぷりで準備してくれたんだ。

胸がジンと暖かくなった。

「通学は電車だっけ?」

「はい、そうです」

「じゃ、駅まで送るよ」

聖哉さんが長い指に絡めた車のキーを見せる。

くぅっ!何をやってもサマになる!

聖哉さんは、社会人で高校3年の俺とは5つ違う。

聖哉さんの運転する姿は見たいが、2人きりは緊張しそう……。

でもここまで言ってもらって断れないし……と、車に乗せてもらう。

車の免許無いし、そんなに興味も無かったから、車種とか分からないけど、何だこのフッカフカのシート!!

良い香りするし、広い!!

快適だ〜と思ってたら、まだ引越しの準備の疲れが残っていたのか、俺はウトウトと眠ってしまった。

駅までの話が、どうも聖哉さんは最初から学校まで送るつもりだったらしく、駅までなら起きてたはずなのに、学校までは4駅もあるので、快適車だと眠ってしまったのだと言い訳しておこう。

「蒼汰くん、蒼汰くん。起きないならイタズラしちゃおうかな」

頬ににサラサラとした毛の様な物が当たる。

柔らかくて気持ちいいな……。

まだ微睡んでいたいけど、ゆっくりと目を開ける。

目が覚めると……。

「うわっっ!!!!せ、聖哉さん?!?!」

あまりにも間近に整った顔があったので驚いた。

「ははっ、あと少しだったのに」

「あと少しって何ですか!!」

「ふふっ、また次の楽しみにしておくね。だって俺は、蒼汰くんを起こすのが仕事だから」

え、これ起こされる度、ドッキリさせられるの?!

きっと、帰ったら、聖哉さんに構われて、疲れてぐっすり眠り、そしてまた明日目が覚めると……。


〜END〜

お読み頂き、ありがとうございました。

7/4/2024, 1:12:11 AM

「この道の先に」


道は一つじゃない事は知っている。

でも知らない道を進むのは迷いそうで怖い。

慣れた道が一番良い。安心安全が一番だ。



「あ、工事今日からだったのか」

いつもの決まった通学路を歩いていたが、通行止めの看板に行き当たった。

学校から迂回路の知らせが来ていたが、あまりよく見ていない。

時間に余裕はあるのだが、迂回するとどれ位の時間を取られるか分からない。

ここから迂回しても最短で行ける道は……。

頭の中で地図を広げる。

「あ、通行止め今日からか!」

大きな声に驚いて振り向くと、地毛と言うが俺は信じていない明るい茶色の髪に同じ色の愛嬌のある瞳、やや太めのキリッと釣り上がった眉に通った鼻筋、身長も178cmと長身で妬ましくなる容姿を持つ男が立っていた。

ゲッ!あまり関わりたくないクラスメイトと一緒になってしまった。

俺に気付かず行ってくれと心の中で祈るほどだった。

「中西じゃん!中西も俺と仲間か!ラッキー!一緒に行こうぜ!」

この軽いノリが嫌なんだ。

見た目も……。

「ネクタイちゃんとしろ。靴の後ろを踏むな」

「わー、朝から色々見てくれてる。やったぜ」

「いや、見てない。目に付くだけだ。直せ」

これが俺と大石の毎朝のやり取りだ。

ネクタイは持っていて、いつもポケットに入れているのを知っている。

「はい、どーぞ」

ニコニコしながらネクタイを渡してくる。

「昨日が最後って言ったぞ、自分でやれ」

「ネクタイのやり方忘れたんだよな〜。やってくれないならいいや。遅刻するから行こうぜ」

靴だけ履き直して歩いて行こうとする。

俺はため息をついて靴は直したからヨシにするかと

「貸せ。今月中にネクタイ覚えろよ。来月からはやらないからな!!」

とネクタイを奪い結んでやる。

「よし、で、迂回路はどの道だ?」

「あの道行こうぜ」

「あんな細い道を迂回路にはしないだろ?」

「でもあの道が絶対最短だ」

何を根拠に最短と言うのか分からないが、大石は細い道に行ってしまう。

学校指定の通学路以外で事故でも遭ったらどうするんだと思いながらも、1人放っておくわけには行かず付いて行く。

細い道は小さな川に沿っていて、2人並んで歩ける道幅で、車は通れず、なかなか良い散歩道になっていた。

「この道良いな」

嬉しそうに大石が言う。

「そうだな。初めて通るがなかなか良いな」

川の水は澄んでいて、小さな魚の影も見えた。

「あ、猫だ」

川の反対は、人が居るのか居ないのか築年数の多そうな家が数軒あり、塀の上に丸くなった猫が俺たちを見下ろしていた。

「逃げるかな」

そう言いながら、そうっと大石が手を差し出すと猫はスリッと顔を擦り付けてきた。

「お、可愛い!人馴れしてる。中西も触ってみ」

実は猫好きなんだ。触りたい!!

言われて、そっと手を差し出してみると、ザリっとした舌で舐められた。

「朝ごはんの匂いが付いてたかな?」

大石が揶揄う。

「この辺、猫多そうだな。あそこ子猫が居るわ」

大石に言われ、見てみると2匹子猫が並んで座りこちらの様子を見ていた。

ここは天国かな。

妹が猫アレルギーで猫が飼えないのを残念に思っていたが、こんな良い散歩コースを発見するなんて……!

「この道通って良かっただろ!明日はまた違う道行ってみようぜ」

大石が胸を張って言う。

俺だけだったらこの道は通らなかっただろう。

無難な安全な大きな道を通り、ただ足を動かして学校に着いていた事だろう。

今日がたまたま良い道だったのだと思うが、明日違う道を行くと聞いてワクワクしてしまった。

この道も俺1人だと猫に気が付かなかったかもしれない。

大石が居たからこの道が好きになったのだと思った。

「よし、ここ入ってみよう」

「おい、遅刻するだろ。そこに行きたいなら早い時間に家を出ろ」

すぐ横道に逸れようとする大石を止める役割も必要だ。

うんうん、と俺は自分の必要性を見出した。

「チェッ!今ならどこでも付いて来ると思ったのにな!じゃあ、明日は少し早めに家を出るか。時間決めようぜ!」

工事の間だけだとは思うが、俺は大石と一緒に学校に行く事にした。

明日はどの道を行こうか……。

いつも1人だった道。

これからは変わる。

この道の先に



〜END〜


読んで頂き、ありがとうございました😊

7/3/2024, 2:28:59 AM

「日差し」

(「赤い糸」の2人のその後のお話です。BLですので、苦手な人は読まないで下さい🙇)


何もかも、この強い日差しのせいなんだ!


あの時は周りが気にならなかったが、今思うと顔から火が出そうな体育祭。

隼斗と一緒に居ると冷やかされたりしたが、嫌がる俺の姿を見て隼斗の威嚇が思った以上の効果を発揮し、あれから3ヶ月ーー今はもう誰も何かを言ってくる事はない。

赤いハチマキを運命の赤い糸とか言うのが紛らわしかったんだ!

結局の所、先輩と後輩。隼斗と俺の関係は何も変わらない。

まぁ、少しだけリレーで真剣に走る隼斗をカッコいいと思ったり、違う階の俺の所までわざわざ来る所が可愛い奴だと思ったりしなくもない。

少しだけ、俺の中で隼斗の立ち位置が変わったかなと言う感じかな。ほんの少しだけな!!

隼斗も今までと何も変わらない。

「今日も俺の好きなゆいちゃんだ」

「はいはい、どーもどーも」

隼斗の『好き』は一日一回以上出るので、もはや合言葉だ。

ただ、ちょっとスキンシップが増えた感はある……いや、ちょっとじゃないな、俺今羽交締めにされてるからな!!

「これ見て誰も何も言わないし、助けないのどうかと思うんだが……。いい加減離れろよ!梅雨も明けて夏本番なのに暑苦しい!!」

「だって、ゆいちゃん、この前の体育祭から注目浴びてるし、俺のってアピールしとかないと……」

「誰のせいで注目浴びて、誰のせいで現在進行形なのかって話なんだけど?!隼斗が居なければ俺は目立たない地味人間ですけど?!」

「そんな事ないよ!ゆいちゃんは自分を分かってないからなぁ」

「大体、俺のって何だよ。俺は物じゃ無いし、隼斗に所有された覚えもないんだけど?」

「運命の赤い糸を受け入れてくれたんじゃないの?ゆいちゃんが意識してくれるまで待つつもりでは居たけど、ゆいちゃんの中では、何も変わらないんだな……」

ハチマキは隼斗が勝手に腕に巻いただけじゃん。意識って何をだ?何も変わらないって……変わる訳ないだろ!

何?運命の赤い糸を受け入れたって男同士で付き合うの?冷やかしあったけど、睨んで潰してたの、冗談言うなって事だろ?違うのか?

俺は隼斗に何をどう言えば良いのか分からず混乱する。

そんな俺を見て少し寂しそうに笑うと隼斗は俺に背を向けて歩いて行った。

その日から、隼斗は俺の所に来なくなった。

派手な一年生が三年生の階に来るのが日課になっていたのが、パタリと来なくなり、俺だけじゃなく、他の人らも違和感があるらしい。

「悠一、あの派手な一年もう来ないの?存在感あり過ぎて、なんか居ないと不思議な感じする」

「知らねぇよ。もう来ないんじゃないの?」

適当に返事する。

いつも休憩時間にベッタリくっついて来るので、居ないと休憩時間が長く感じる。

ジュースでも買いに行くかと、一階まで下りると、一年生の賑やかな声が聞こえた。

廊下で固まってる一年生を見つけると、その中に真っ赤な頭が他より飛び出て目に入った。

俺と話してるよりも楽しそうではあるが、どこか意地が悪い様な、柔らかさが無くなっている様な表情の隼斗。

周りは楽しそうに笑ってるけど、隼斗の目は笑ってない様に見える。

でも、一年同士でつるむのが一番だよな。俺は来年卒業して居なくなるんだし……。

隼斗に見付からない様に自販機がある方へ向かう。

ジュースを買ったが、3年の教室に戻りたくないので、そのまま中庭の木陰にあるベンチに横になる。

「暑い……」

木陰でも葉と葉の隙間だったり、枝の長さが足りなかったりで、所々夏の強い日差しが降り掛かる。

暑いが起きるのも面倒で、もういいやとそのまま我慢して横になったまま目を閉じる。

どれ位経ったか分からないが、ふと日差しにジリジリ焼かれている部分が無くなったなと不思議に思い目を開ける。

と、目の前に隼斗の顔があり、ビックリする。

日差しが当たる所に手を当てて影を作ってくれてたらしい。

そして、俺は隼斗に膝枕をされていた。

「おはよー」

一方的に離れたクセに何もなかった様に普通に挨拶された。

座ってる分、木陰から出てしまい、手は俺に掛かる日差しの影となり、隼斗はほぼ全身強い日差しを受けていた。

鼻の頭に汗をかいていたが、気にせず俺に笑い掛けている。

あぁ、もう!!

隼斗の言う意識って言うのは何か分からないけど、愛おしい気持ちと言うのはこの事だろうと思った。

「隼斗」

俺は腕を伸ばして隼斗を抱きしめた。

「ゆいちゃん?!」

「……暑い……。お前、熱中症になるだろ?!ほら、ジュース飲め!」

「俺、暑さに強いから大丈夫!ゆいちゃん、寝れた?

……あれ?影にしてたはずなのに、顔赤すぎない?大丈夫?」

「影に居ても暑いものは暑いんだよ!日差し強すぎな!もう外で寝るのは無理だな、うん!」

隼斗の顔が見れなくて、早口に言ってその場を去ろうとする。

「あ、ゆいちゃん待って!一緒に行こう」

腕を掴まれ、そのまま手を繋がれる。

俺の顔は更に赤くなった気がする。

「ゆいちゃん、可愛い。今日は日差しが強すぎたね」

その言い方、気付かれたのではと思ってしまう。

「そうだ!今日は日差しが強すぎるんだ!」

茹でダコの様な顔をしているだろうと、俯きながら、手も汗ばんで気持ち悪いだろうなと思いながらも繋いだ手は離せず、そのまま一緒に歩いて行く。

一度愛おしいと思ったら、その気持ちは消える物ではない。

でも、俺はまだこの顔の熱は夏の日差しのせいにしておきたいと思った。


〜END〜

今回のお題は難しくてまとめるの大変でしたが、なんとか書き切れて良かったです。
お読み頂き、ありがとうございました😊

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