鐘の音を僕は覚えていた。
除夜の鐘108回の音
来年も一緒に聞こうね!
君との約束……
ごめんなさい
つまらないことでも頼まれたら笑顔でこなしてしまう君
いつも僕は心配でならなかった。
特に仲良くもない人でも嫌な仕事を次から次えと回してくる
先輩や同僚たちは楽な仕事ばかりしてサボってばかり
全く関係ないミスの仕事まで君のせいにされて……
僕に言う勇気があればもっと変われるのかもしれない
でも……
休みの日までも呼び出して仕事させていた
君が弱音を吐いたことはなかった
僕の膝枕をしていてもいつも心配してくれたのは君だった
ある日夜遅くまで仕事場に残りなにか作業をしていた君
次の日先輩や同僚が仕事場に来ると……
目を丸くし……絶望したような顔で
仕事をしていた
全て君に任せていたから先輩達は使い物になるはずもなく怒鳴られながら涙目で必死だった
君から来たLINEには……
僕は少しスッキリした気持ちになった
病室から見た空は夕焼けは……
目を覚ます時を僕はずっと待っている
手術に失敗して植物状態になった君を……
この怒りは僕を変えてしまった
手術に失敗した原因を絶対につきとめてやる
絶望を味あわせてやる……
そして君を助けるために
「明日、もし晴れたら」
そんな文字で僕の好きな小説は終わってしまった。
好きな小説を読んでいるのは好きだけど……
終わりが近づくと悲しくなってしまう。
図書室の中を静かに雨の音が響いていた。
いい本だったなぁ……
次もいい本に出会えるといいな……
「もう図書室閉める時間だよ」
幼なじみの君が話しかけてした。
「今回の小説は!ここが良くてね!」
静かに僕の話を聞いてくれる
帰り道は晩晴(ばんせい)だった
澄んだ瞳……
僕は勇気のない男だ
片思いの彼女は今日結婚する
初恋は実らない……
そんなのはめいしんかと思っていたけど
家に帰った僕は……
落涙(らくるい)した