あ、赤ちゃんの泣き声。
すごい音量だぁ。
あそこの家かな。
家の中から突き抜けてきこえてくる。
ん〜感情がこもってんな〜。
これが、たそがれ泣きってやつか?
これだけ、大声出せるのって、
すごいよな。
俺が今腹の底から大声で泣きわめいても、あんなに、
遠くまで声を届けられない。
そういえば、
子供の頃って漫画みたいな泣き方してたな、
「うわーん」ってね。
ははッ、天真爛漫。俺爛漫。
なんか理由があるから泣いてんだよな。
理由があんだよ。
伝えたい気持ちが、泣き声なんだよ。
な。
あーあ、きっと明日も残業だよなぁ。
最近仕事が立て込んでて、
定時に帰れないし、疲れも出てきたしで
気持ちもダウンしてんなぁ俺。
コンビニ寄るか。(いらっしゃいませー)
俺のオアシス、コンビニ。最高。
そういえば、チーズ入ってるホットドックみたいなの、気になってたんだよな。
無いのかよ。
最高。訂正。
なんだよ、俺の疲れには、あれが必要だったんだよ。
どんな味だか知らねーけどさ。
くそーっ、もう今日は暴飲暴食する。
明日の朝食も酒も、あれもこれも、
一緒くたに買い込んで、
クソ重くなってる袋を手に
、表に出た。
夜は空気が澄んでんな。
なんだよ、月がキレイかよ。
まぁ、いろいろあるわな。生きてりゃ。
月見しながら酒飲むか。
「チャポン」「ふーっ」
キャンドルの優しく揺らめく光が踊るシャワールーム。
いつも離れられない影も、仲良く一緒に揺らめいて踊っている。
お風呂好きな私への誕生日プレゼント
が、バス用キャンドルかぁ。
女心、分かってるね。彼女が出来たもんね。
ゆっくり、ゆっくり贅沢に時間を過ごす。
キャンドルの光と静寂に包まれた、
シャワールーム。
「ダーックション!!」
遠くの方で、くしゃみの音が聴こえてきた。
季節は移り変わり、夜は少し冷えてきたもんね。
プレゼントありがと。
お礼に、とっておきのハーブティーを淹れるね。
窓から入る朝の光が心地よい通勤電車、少し混み始めてきた。
吊り革を持ちながら、一昨日の別れについて、つい考えはじめてしまう。
すぅーっと毒のプールに自ら飛び込み、致死量スレスレの毒のカクテルの味見をする。何がブレンドされていて、こんなに不味くなったんだろう。
嘘が多かった彼、何かと我慢してた私。
別れ際、
私を蝕んでいた、毒にまみれたプールの存在にやっと気づけた。
もう少しで、目的の駅。
この電車の中を毒のプールに変換してみる。
会社の最寄り駅に着いて、ドアが開いたら、毒のプールの水を全部、排水する。
そうする。