「今日夜何食べたい」
「はい、カレーうどん」
「汁飛ぶからやだ」
「あれしろよ、あの、赤ちゃんが首から掛けるやつ」
「よだれかけ?」
「それ」
「やだよ馬鹿」
「カレーうどん食べたいもん」
「仕方ないなぁ」
「よっしゃ」
#とりとめもない話
何処から貰ってきたんだろう。目の前で力無く横になる同居人はマスクの下で何度も咳き込み、苦しそうに呻いている。気が付くと枕元に置いていたペットボトルが空になっていたので、キッチンに行き冷蔵庫から新たなアクエリアスを持って行った。
ベッドの上の彼は謎の言葉を発しながらそのペットボトルを飲み始める。普段の覇気を感じさせないあまりにも頼りない姿はある筈も無い事に鬼胎を抱かせる。
少しは楽になるだろうか。彼の頭を厚い手のひらで優しく撫でれば、気持ち呼吸が楽そうになった、気がした。
「早く良くなれよ」
恐ろしくてたまらない、いずれ自分にも降りかかる不穏な影が彼に懐いている。
連れて行かないで、一人にしないで。
頼むから余計な事を心配させるな、と祈るように彼の手を握った。
#風邪
心と心を紡ぎ合わせる。
貴方が笑えば私も笑う。
貴方が悲しめば私も泣く。
貴方が嬉しそうに頬を赤らめれば私の頬に熱が溜まる。
貴方が死ねば私も死ぬ。
そんな風になりたい。
決して離れない糸で縫い付けてしまいたい。
#心と心
朝、教室に入ったら友達が泣いていた。
早かったからか周りに誰も居なくて、この場所だけ時が止まったかのように思える。私は横開きのドアの側から動けなかった。
友達は私を一瞥してから涙を拭いて、いつもの様に笑う。誤魔化せないくらい赤く腫れた目元が彼女の悲しみの深さを物語っている。私は何も言えなかった。
何でもないように「おはよう」と言われたので、私も同じように返した。そんな時もあると言う自分と、どうして何も言ってくれないんだろうと言う自分がいた。理由も何もわからない。いつだって不透明なくせにお互い見透かしたような会話をしていた。
私達の友情は紙切れのようなものだった。
私はその時初めて、友達が笑顔を取り繕っていた事を知った。
#何でもないフリ
ふとした瞬間に膝から崩れ落ちそうになる事がある。
実際崩れ落ちたし、もう起き上がれないな、終わりだなとも思った。
それでも私がまだ生きれているのは、腕を引いて立ち上がらせてくれる君が、貴方が、お前が居たから。
投げ出したくなったって良いじゃん、俺もそうだし、お前もそうだ。もっかいやってみよっかなって思ったらそれだけで一億円あげれるくらい偉い。
だから一回休もう。これまで生きるのよく頑張ったよ。ちょっと休んだって誰も怒らないよ。取り敢えず呼吸して、美味しいもの食べて、寝よう。一日十二時間くらい寝よう。
それで良いよ、充分。前向こうって思えなくても、これ以上頑張れなくても、ずっとそばにいるから。
#仲間