【何でもないフリ】
所詮心は目に見えないから
私たちは目に見えるものしか知り得ないのだから
どれだけ抗っても
どれだけ目を背けても
どれだけ逃げても
どれだけ叫んでも
今日ここにいるという事実は昨日と変わらない
同じ場所に集いし者が
同じ条件下で課せられる
そこに在るか無いか
シンプルな2択で
ナニカが『在るか無いか』が判断される
その記号しか誰も見ようとしないのだから
中途半端に頑張った貴方は
在る事実だけで存在が成り立ってしまう
決して隠している訳では無いけど
見せている訳でもない
結果誰の目にも止まらぬのならば
それは『フリ』とでも呼ぶのだろうか
仕方ないだろう
なんでも ある と見せるほど
そんな余力は残っていないのだから
【部屋の片隅で】
誰も入ることの無い自分だけの孤城
このまま外の世界から存在が消えて
部屋の壁と同化して
すっと世界から居なくなれたら
なんて
1度はしたことはある妄想
今日も部屋の一角の世界で
一日が終わる
【太陽の下で】
特に意味なんてないけど
いつの日からか避けてきた
あんなにも眩しくて
温かくて
濁りない光に
直接触れることなんて許されない気がした
コケまみれの私は
きっと駆逐されてしまう
だったら私は
嗅ぎなれたカビ臭さの立ち込めるこの空間で
深く息を吸いたい
一度触れたらもう最後
きっと私は次の雨には耐えられないのだから
日向によく似合う少女の無垢な笑顔を見て
いつか私も
心の底からあの光に包まれたい
なんて
過去の姿に夢を馳せる
なんて愚かな行く末
草花の匂いが立ち込める
世界がまるごと洗われて
天日干しされる感覚が
ふと、蘇る
【意味がないこと】
意味を見出すのはあなたじゃない
私にとって意味あるもの
今日は早く寝るか
明日は休んじゃうか
湯船にゆっくり浸かるか
なんのために生きて
なんのために勉強して
なんのためにここに存在して
たまに虚無になる
全てが無駄に感じて、何もかもがつまらなくなる
でもそもそも
意味のないことに楽しみを見出してきたのが人間じゃないか
ボールを蹴り回して何になる
音を奏でて何になる
オシャレをして何になる
ジェットコースターで急落下して何になる
そんなことに意味を求められたら
それこそ生きずらい世界なのではないか
この世の全て
私という存在全て
意味なんてないのかもしれないけれど
誰かに与えられた意味
それがたとえ神様仏様でも
そんな意味に応えるための人生は嫌だ
誰かに意味の是非を図られた毎日の生きがいとは何だ
それならば
ついには意味なんて見つけられなくても
自分のための自分が思ったもん勝ちの
一瞬一瞬を生きたい
【柔らかな雨】
傘をさしてたはずなのに
霧のような雨粒が
横から、後ろから、
私の身体を包み込む
触れているのか
そこにいたのかも分からないくらい
優し過ぎる手で
そっと
トントンしてくれる
こんなか弱い力
あってもなくても何も変わらないはず
むしろ拒んできた存在
なのに何故か
ありもしない温もりを感じて
傘の下
私は顔を濡らした