僕は家族が嫌いだ。どうせ、心底僕のことを馬鹿にしてるのだろうと確信している。一番若くて何も知らない。なんでもすぐにマウントを取ってくる。何が楽しくて生きているんだと疑問にも思う。何が平穏だ。表面だけの癖に。
まぁでも、どこの家族も結局はそうなのだろう。表面では「仲のいい家族ですよー」と見栄を張って。内面は誰も他人になんて興味ない、家族なんて呼べない群れでしかない。それは幸福か?知るか。それを決めるのは僕じゃないんだ。家族みんなわかっている。その上で自然とそうなってしまったんだ。好き好んでこんな薄っぺらい家族になりたい奴がどこにいるんだ。家族の中だとしても、所詮決められた役割をこなせなければ価値なんて得られない。これは当たり前のことで、子供な僕が今更気づいただけの話なんだ。学校でも、友達関係でも結局はそこに行き着く。存在価値のない物はいらないのだ。存在価値のあるものが群れて、やっと初めて平穏だ。その存在価値に自由なんてない。
あなたに伝えたいことがあります。なのでどうかこちらに来てください。焦らなくてもいいですよ。川を渡るのは大変でしょうから。それでも私は待っています。あなたに、とても大事な話があるので。
いきなり消えてしまったあなたに言わなければいけないことが、言いたいことが山ほどあります。これだけ私を待たせるくらいですから、軽いお土産とか、最低でも綺麗な花の一本くらいは持ってきてくださいね。
待っていますからね、ずっと。時間が経って、私がそちらに行く前に、どうか顔だけでも出してください。
あなたに会いたいです。
誰もがみんな、この世界のことが嫌いだ。そう思っていないと僕はみんなを理解することができない。
僕はこの世界が憎いからだ。うざったい。消えてしまえ。何度願ったことか。、当然、そんなことを言っときながら僕は生きている。勇気がないんだね。弱いんだ。この世には辛いことが多すぎる。誰も彼も信用できない。誰もがみんな敵に見える。そのくせ愛を欲する。
獣なんだね。
強欲だね。
でもね。誰もがみんなそうなんだよ。みんな見栄えのいい上っ面を携えて、厚い皮の下はみんな同じ。疑心暗鬼で強欲で貧弱で弱虫な獣なんだよ。
そうなんだって、信じたいんだよ。
『こんな夢を見た』
帰り道、夕陽が道を海水のように埋め尽くしていく。冷たく悴んだ指先を制服のポケットに入れ、指を温めながら中に入っていた何かもわからない包装紙を弄る。
「今日はどんな夢を見たの?」
隣で歩く君は言った。毎度の如く、全てを取り込むように自然に。
「今日…?えっとね、何かを買いにどこかのビルに入って、そしたら家族連れがいて、なんかお父さんと仲良くなってさ、一緒に歩いてるうちに画面が変わって、大きな駅の中で…」
ふと君の方を見る。君は黙って、笑顔で、僕の顔を見ていた。
「それで?」
僕は充分に暖まった手をポケットから出し、身振り手振りを加えながら夢の説明を続けた。
「その後はね…」
支離滅裂な夢の話を聞き終わり彼女は笑った。無邪気な笑顔が夕陽に照らされていた。寒さで赤らむ頬を隠すように。
「そっちはさ、どんな夢を見たの?」
笑い終わり白い息を吐き出す君に問いかける。君と目があって瞳の奥が熱くなる。君は目を細めて笑うとこう話し始めた。
「こんな夢を見たんだ。」
『特別な夜』
月が夜を呑んだみたいに
この部屋は翳っている
僕は一人で机に伏している
眠たくもないから
寝るほど生きてもいないから
よく育つ気もないから
寝ずに深い世界を観測する
月が眠ってしまった夜
星々は「自分が主役だ」と言いたげに
強く輝いている
月がいない夜だから
特別な夜だから