『こんな夢を見た』
帰り道、夕陽が道を海水のように埋め尽くしていく。冷たく悴んだ指先を制服のポケットに入れ、指を温めながら中に入っていた何かもわからない包装紙を弄る。
「今日はどんな夢を見たの?」
隣で歩く君は言った。毎度の如く、全てを取り込むように自然に。
「今日…?えっとね、何かを買いにどこかのビルに入って、そしたら家族連れがいて、なんかお父さんと仲良くなってさ、一緒に歩いてるうちに画面が変わって、大きな駅の中で…」
ふと君の方を見る。君は黙って、笑顔で、僕の顔を見ていた。
「それで?」
僕は充分に暖まった手をポケットから出し、身振り手振りを加えながら夢の説明を続けた。
「その後はね…」
支離滅裂な夢の話を聞き終わり彼女は笑った。無邪気な笑顔が夕陽に照らされていた。寒さで赤らむ頬を隠すように。
「そっちはさ、どんな夢を見たの?」
笑い終わり白い息を吐き出す君に問いかける。君と目があって瞳の奥が熱くなる。君は目を細めて笑うとこう話し始めた。
「こんな夢を見たんだ。」
1/23/2026, 3:13:13 PM