子猫
夜の塾の帰り道
電信柱の影に段ボール
そこには白とこげ茶色の
まんまるおめめの
子猫がいたの
「あった場所に捨ててきな…」
父には叱られ母は知らんぷり
頬ずりしては鼻をすすり
泣きながら歩く
絶望の秋
私だけが救える…と
安否が気になり朝に見に行った
子猫はおめめウルウルさせ
差し出す牛乳
ペロペロ舐めた
学校帰りの帰り道
子猫がいなくて、探しまわってた
「拾われたのよ」と母は言った
それならいいねと
嘘つき笑う
数日後の日曜日
道路に転がる死骸、あの子猫
私は知らぬふりで逃げた
殺したと思い
心を閉ざす
何がこの世の正義なの?
大人になってもずっと分からない
故郷に帰りベビーカー押す
おギャ~と泣くたび
ドキってしてる…
秋風
すってんころりん
ころころりん
恥ずかしさに
秋風、ぴゅ~ぴゅ~
ずっこけドボンと
ぶくぶくぶく
川に落ちたよ
名月、知らんぷりぷり
恋して、どすこい
ケンカだ、どすこい
負けて…落ち葉だ
秋風、また…ぴゅ~ぴゅ~
「冬が来るぞ!」と
秋風、エンエン…泣かせるな
秋風、ぼっちだ、ぴゅ~
また会いましょう
二度と会えない気がして
指切りするように言い放つ
「また会いましょう」
とても嫌いな人にも
いじわるするように催眠術
「また会いましょう」
弱虫だから、腰抜けだから
へタレのわたしの、やせ我慢
愛したいんだ、ハグしたいんだ
せっかく出会った、運命だ
note去る人増えてく
コメント欄にはしょうがなく
「また会いましょう」
墓にお参りしたとき
死んでる祖父母に繰り返す
「また会いましょう」
シャンパンみたい、酔っては踊り
弾けて歌い、大爆笑
一人だけれど、大勢なんだ
約束した人、いっぱいだ
また会いましょう
また会いましょう
弾けて歌い、大号泣
また会いましょう
また会いましょう
天下も獲ったる、君のため!
スリル
マイケル・ジャクソンの
「スリラー」
あれは衝撃だった
音楽と映像の革命だった
未就学児の頃の祭り
田舎の縁日
人混みって妖怪だった
スリとかチカンとか怯えてた
学生時代のデート
ジェットコースター
おばけ屋敷のスリルさえ
見つめ合うドキドキが勝っていた
最強で最悪の
スリルは
死につながる病気だった
両親を見送れば、私の番が来る
飛べない翼
15才、不登校になった
16才、落ちこぼれになった
17才、自殺を失敗した
18才、たまり場に行った
19才、運命に出会った
20才、運命に捨てられた
何をやっても誉められた
天才なんだと思ってた
馬鹿にしていた大人になって
軽蔑される立場になった
大きな翼でこの世のすべて
見下して生きると思ってた
飛べない翼に気づいたけれど
夜中にこっそり練習してる
21才、人生を諦めた
22才、小さな夢を見る
23才、おばあちゃんが亡くなった
24才、もういちど恋をした
25才、平凡を受け入れる
26才、家族遊戯をやってみる
閉じてた翼を自分で切った
必要ないって思ってた
これが幸せなんだと信じ
汚れてみにくいオバサンになる
飛べない翼がムズムズしてる
家族を捨ててもかまわない
飛べない翼を羽ばたいてみる
やっぱりわたしは、自分を生きる
幾つになっても自分を生きる
あなたが応援、それならいいな