『もっと知りたい』
嫌われる前に、もっと貴方に色々聞いておけば良かった。私が悪かったのかな、もうそれすら聞けないほど、距離を置かれてしまっている。
いつから避けられるようになったか、それすら思い出せないほど、私は無自覚で。無自覚なまま、貴方に嫌われてしまった。ねえ、ただの気分なの?それとも、知らぬうちに貴方の地雷に踏み込んだのかな?
仲直りしようにも、原因も分からなければ、貴方の好きな場所も好きな料理も知らない。好きな動物も、色も、花も分からないから、もうすぐ貴方の誕生日なのに、プレゼントも選べないよ。
思い返せば、貴方は私の好みを知ってくれていたのに。私ばかり知ろうとしなかったんだね。
こんな風に別れることになるなんて、想像しなかったから、明日も当たり前に隣にいると思ってた。いつでも貴方のこと知れるなんて勘違いしてた。
…今からでもやり直せるかな。
まだ貴方のこと、私に教えてくれますか。
今はこんなにも、知りたいと思っているよ。都合が良くてごめん。
『平穏な日常』
それは、いつも人を見ている時に感じます。
早朝。電車の中で、イヤホンをして寝ている女子高生や、駅周りを犬と散歩しているお爺さん。
笑い合っている大学生たち、幼児と親、小学生たち。
一軒家の二階、窓から見える部屋の天井、動く影。
リアルではなくて、バーチャルでも
動画の生配信のコメント欄や、オンラインゲームで協力する人達の動き。全て画面の向こうに人がいます。それを思うと、何故かとてもこの生活が愛おしいような気になるのです。
だから、私はぼうっと人を見るのが好きです。
平穏を感じるから。私にとって、人と人との繋がりこそ毎日にある常なのです。
『過ぎ去った日々』
今でもたまに、日常の片隅で思い出が蘇ってくる。
特に休みの日の日が暮れ始めたあたり、感傷的な空気の中にいると恋しくなる過去がある。
目を閉じると瞼の内側で、その景色が見える。
幼い頃、祖母の家の台所。
夏の日の昼間。
白いレースのカーテンが揺れる。畑が見える。
隣には歳の近い従姉妹がいて、まだ小さかった手で野花を摘んだり、色紙(いろがみ)を切ったりした。
あの時、私は世界で一番幸せ者だった。
何も知らなかった。知ろうとする心すら知らず。
心は穏やかだった。
そこには憂鬱や劣等も無く、ただ無垢だけあった。
私の今までの人生で、最も毎日が楽しかったのは、あの時だろうと思う。
私はずっとあそこに居たかった。
今は、もう祖母はいない。
祖母の家も気軽に行ける場所では無くなってしまった。あの頃の無垢な心も、もうない。あの夏の日々は二度と感じられない。いくら涙を流しても。
きっとこの記憶には、死ぬまで囚われ続ける。
『お金より大事なもの』
私は経済的に余裕のない家庭に生まれて、
歳を重ねる度に感じてきた
「夢を叶えるにもお金が要る」という言葉。
お金さえあれば、他は要らないのに、なんて
今も、きっとこれから先も私の頭はそればっかりだ。
だから、私には「お金より大事なもの」の正解を導き出すことが難しいし、分からないに尽きる。よく言われる「愛」とか「時間」なんてものが、お金より大事だと思える未来が、私に来ますように。
いつか、お金で買えない大事な何かを手に入れられますように。
『月夜』
月の綺麗な夜にはドビュッシーの「月の光」という曲を思い出します。最初どこでその曲と出会ったのか、私はもう覚えていません。
それでも、思い出そうと思えば、脳内でピアノの静かで感傷的なメロディが流れてくるのです。幼い頃から聴き慣れた音楽のように。
その曲を聴くと、月明かりに照らされる夜の海辺を、裸足で歩いているような。はたまた、月夜のために薄明るくなった寝室のシーツ、それに包まれる横顔が、情景として見えてくるようです。
月の綺麗な夜には、こんな想像をしながら
眠りにつきたいですね。