30代の母、同居嫁

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12/2/2022, 11:56:34 AM

光と闇の狭間で

 闇に包まれて眠る。物心付いた頃から、就寝時は部屋を真っ暗にして目を閉じる。
 出産後も、息子が寝た後に電気を全て消し私も息子の隣で眠りについていたのだが、今は常夜灯を朝まで点けている。生後間もない娘をベビーベッドに寝かせていて、授乳のために夜中に私や娘が移動しなければならないためではなく、暗闇をいつの間にか怖がるようになった息子が夜中目を覚ました時に泣かないように灯りを付けている。息子のための常夜灯だ。
 息子が暗闇を怖がる度に思う。なぜ暗いところが怖くなったのか、私も幼い頃は闇を恐れていたのにいつどうやって克服したのだろうかと。
 私は夜の闇の中を歩くのが好きで、実家に住んでいた頃は街灯が無く足元も見えない夜道を星明かりだけで散歩するのが大好きだった。闇が心地良かった。まるで母親のお腹の中にいるようで自分の体重すら闇に隠れてしまい、体がぷかぷか浮かぶような感覚を楽しんでいた。空が晴れている夜は、星の光を自分の目に届けてくれる闇に感謝していた。
 時間が経ち、今の生活は、夕方息子を保育園から連れて帰り、娘を背負いながら夕飯を作り、夕飯後は子どもたちと風呂に入り、台所の片付けをしてすぐ子どもと遊び、寝かせつけて自分も就寝という毎日で、夜の闇を楽しむ時間はこれっぽっちも無い。
 だから私は、今日も常夜灯の光の中で目を閉じて、家の外の闇を想像して眠るのだ。
 

12/1/2022, 11:53:11 AM

距離

 私の実家には3人の家族がいる。父と祖母と弟。
幼い時に病死した母代わりの祖母は、もうすぐ85才で、畑の野菜のことや夕食のことを日々考え、車に乗って食材の買い物や友だちが集まる場所に、週に1回は自分の運転で出かける。
 ボケる暇なしの祖母に、私は週2日以上会いに行く。自宅から実家まで車で約20分、同居嫁の私にとって、この距離の実家は毎日でも行きたいくらいだ。   
 でも、毎日会いたいかと言うとそうでもない。私が娘に授乳していると隣に座って覗き込んでくるし、娘が薄着だなんだと会う度に小言を言われるのが微妙にストレスである。
 週に2日会って近況報告するくらいが、私と祖母にはなんだか丁度いい距離なのだ。

11/30/2022, 2:08:24 PM

泣かないで  

 生後半年の娘、夜九時過ぎに寝なくて、泣かれたことが一度だけ二ヶ月前にあった。二歳の長男に寝る直前のiPad動画を見せたくなくて、娘が寝ないのにも関わらず夫に娘を託し、私は長男を絵本で寝かせつけを始めた。夫は泣いている娘を抱っこしてあやすが、泣き止まない。長男は大人しく私の腕の中で絵本の読み聞かせを聞いているが、娘が泣き止まないどころか本気の泣き。ついに私たちの寝室に義母がやってきて「だいじょぶ?娘ちゃん貸して」と夫から娘を取り上げて義父母の部屋に連れて行く。私は泣き止まないだろうな…と思いつつ、息子の寝かせつけを続けたが、やっぱり娘は泣き止まない。「ばあさんが眠れない」と義父のイライラした声が聞こえたので、私は息子を夫に託して娘を連れ戻そうと義父母の部屋に行くと、義父が娘を抱っこしていた。「すみませんでした、寝かせます」と言うと「頼むから早く寝かせてくれよ」と怒った声と共に娘を返される。孫と嫁と同居してるのだから赤ん坊の夜泣きの声を一時間くらい怒らずに聞き流してくれないのかなこの人たちは。田舎でこの家には生まれて間もない子どもがいることは近所の人たちも分かっているのに、と悲しくなる。
 娘が生後四ヶ月ずっと夜は泣かせないで寝かせつけているが、それは娘の特性だけではなく私の努力も半分くらいあると思うのだけれど、まぁそんなこと言い返す気力もなく、自分の寝室に戻り、絵本で寝かせつけできずiPad動画を見せている夫に心の中でため息つきながら娘の寝かせつけにかかった夜は娘へ「夜、寝たくなくて寝なくてもいいから、せめて泣かないでいておくれ」と願ったのであった。