ずっとこのまま
ずっとこのまま時間が止まったらいいのにって思うことがあるんじゃない
そんな時この琥珀色の砂時計を使ってみて
時の流れを逆行させる力がある
時が進む分だけ巻き戻る
つまり時の上りと下りが押し合う
ずっとこのまま止まるからね
何も変わらないことを望んでいるって思うかな
いいえリワインドタイムの醍醐味はそこじゃないよ
止まってみえている間に自分を成長させられるところ
砂時計の力を借りて時の速さに抗ってみる事
何もしないんじゃないからね
結果なんてわからないよ
自分が巻き戻りたい時に再び身を置いて
全力投球し続けるの
長く生きていると流れに身を任せるのに慣れきって
今では現状温存できれば御の字かなって気分
でも懐かしい曲を耳にすると流れに棹さしていた頃の若い自分に会いたくなったりするのよ
後先考えずにこのままずっと疾走していたいって…
寒さが身に染みて
おじいちゃんおばあちゃんへ
寒さは頭で感じなきゃね
身体で感じるのは若い時までなんだって
皮膚感覚が鈍ってくるってよ
寒さを感じにくくなってきたって?ーうんうん
高齢者だもんー確かにね
回復力は落ちる一方ー認めたくないでもそう
今は冬だと言い聞かせてね
頭で寒さ用心これが冬を乗り切る肝なんだって
元気で春を迎えようね
20歳
強風吹き荒れる中
晴れ着姿で闊歩する若者をあちこちで見かけた
あーあ今日は成人式なのか…
私は田舎の成人式には出なかった
帰省せず
式当日は友人の成人式のお祝いへ行った
振袖姿に真っ白なファーの襟巻き
定番姿であふれかえる会場
華やいだ友人を愛でながら
彼女の手放しの笑顔が可愛いらしくて
私は普段着でめでたさを享受した
それはそれとして
自分自身は着飾り式には全く興味がなかった
父親は娘の晴れ姿を見たかったようだったが
冷めた気分で祝い金だけは貰った記憶がある
額も何に使ったかも全く覚えていない
一人暮らしを始めて久しいのに親の視線に囚われたまま殻も破れずにいる自分自身への焦り
成人がなんだと世間の声にウンザリしていた
今日まで気づかずに来たがあれはあれで
人生初めての親や世間への反抗で…
20歳にしては何とも恥ずかしい成長の証を残していた訳で
冥土の土産に
めでたい記憶の一つにしておきますわ
三日月
三日月が吹き飛ばされそうな夜
背後に満月の影
頼りなげない人影は
長く伸びることで大地にしっかりと立つ
色とりどり
はーいクリスマスプレゼント
真っ赤な包装紙に金色のリボン
贈り物慣れしている孫は
サッとひと引きでリボンを解いた
色とりどり36色のマーカーが鮮やかに花を添える…はずだった
ところが包みから顔を出したのは
原色とは程遠い渋めの色あいのキャップで
私はそれらを二度見して端末の画像で色選びをしたことを後悔し始めていた
ネエ描いていい?
孫は私の動揺には無頓着で得意の女の子をスラスラ描き始めた
あのね
これは重ね塗りやグラデーションを楽しめるペンなんだよ…私は苦し紛れの説明を付け加えた
言い終える前に彼女は新たな色を手にとりスッと重ねていた
色とりどりとは程遠いカラーラインナップのペン先から現れる彼女独自の色たち
お絵描きの大好きな子に届けてね
とカード書き添えていた
ばあばからサンタさんへのリクエスト通り
孫はあっという間に36色を自分流の色合いに変え増やして見せた
温かみのある一枚の絵からはエネルギーに満ちたハッピーオーラが溢れ出ていたわ
いつの間にか好きが高じて自分の色を作れるまでに成長していたのね