soumatou

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11/21/2025, 5:06:31 AM

見えない未来へ

椰子の木の周りをぐるるるる…
うなりながらまわっていたトラが
バターになっちゃう
3歳の私はちびくろさんぼのお話に夢中

バターバター黄色くてトロッと美味しそう
すくって食べたい幼子の憧れトラバター
お話の中の食べ物は突拍子もなく非現実で
見えない未来へ掻き立てられる

だってこの頃バターなんて知らなかったし
ホットケーキもなかったから
おやつはおばあちゃんのきな粉おにぎり

それから数年経ったある日
船乗りの伯父ちゃんがヨーロッパから帰国した
土産は何とバターだった
それは円い缶入りで、船に乗ってやって来た
トラの絵はついていなかったががっかりなんてしていられない
なんたって半世紀前の田舎では
見ることもなかったレア品だ

家族が車座になり目の前のバター様に息を呑む
開缶とともに「ウッ」
嗅いだのことがない異様な臭い…
トラのにおいだきっと
あー確かにこの黄色は
間違いないこれはトラのバターだ
と子どもの私は思い込んだ
鼻をつまむ家族を横目に
すくって食べたいと申し出たが即却下
これは腐っているという事になってしまった

それでも高級なレア品は捨てるに捨てられず…
我が家でひっそりと鳴りを潜めていたのを
こっそり私は舐めたんだろう
瞬時に吐き気と頭痛に見舞われた
恐るべしトラ?バター
一撃を喰らった記憶は大人になった今も鮮明だ

11/20/2025, 3:25:39 AM

吹き抜ける風

自分は今どうしたいのかって
毎日一つ自問自答することにしている

吹き抜ける風の中ならね…
背を押してもらいたい?
向き合い立ちはだかりたい?
仰向けに寝転んで過ぎ去るものをただ見送りたい?
ううん真面目ちゃんはもう十分
大人は卒業
ただただ子供心を取り戻したい

たっぷりとしたワンピースを帆にして
風に身を委ねたら舞い上がれるなんてね

メアリーポピンズみたいに傘につかまり
空からふんわり舞い降りて来るの
九死に一生のおばあちゃん?
違う違うよメルヘンがいい

11/19/2025, 1:25:02 AM

記憶のランタン


一度は行って見たい憧れのランタンがこれ

ベトナムホイアンのランタン祭り
通りに橋に川面に…色とりどりのランタンが溢れる 賑やかで心浮き立つような若い光

雲南省麗江の赤いランタン
円熟の赤燈とトンバ文字が古の迷宮へいざなう

タイのロイクラトン
バナナの葉に花飾りを付け蝋燭の灯りを灯す
手ずから川の女神に捧げる祈りをのせる

まあ、妄想ばかり書いてもしょうがないし
うーん思い出せ

あった!この間手放したColemanのランタン
福島で初キャンプの30数年前
家族4人顔寄せあってワクワク初点火
パパ念願の外国製のその灯りは
幼子の記憶のランタンになったんだと思う
なぜかって?
息子はキャンパー
娘は山ガール
愛用のランタンを持つ大人に育ったからね


そう言えば父を母を愛犬を…沢山の愛する者を送った墓前のあかりも加えたいわ
記憶のランタンは消えることなく増えていく
私を遠くから静かに照らしているって思いたい老いた身の心のお守りにいいでしょ

11/18/2025, 2:58:16 AM

冬へ

世界は冬へ向かっている

冬が色濃い場所へ先回りして行こう
そう、イメージするのは一面銀世界の墓地
墓標にこんもり降り積むパウダースノー

フウッ息を吹きかける
キラキラ光り舞い上がる
サラサラサラサラ崩れ落ちる
雪の精の演出は軽やかで無情
世界を一様になだらかにし白く覆い尽くす

セバスティアンを眠らせ、セバスティアンの墓標に雪ふりつむ
太郎を眠らせ、太郎の墓標に雪ふりつむ

このまま冬へ突き進むのかい
いや、世界はしばし冬眠するといい
人が生命の大切さに目覚めるには時が必要だ

白い闇が守り通したこの世の気配に気づいたら
耳をすませて雪解けの音を聞こう
春の色濃い場へ向け一歩を踏み出す時だ

11/17/2025, 3:30:32 AM

君を照らす月


最近、照明をあちらこちらにつけはじめた夫

防犯対策用にね敷地内ライト
エコ補助金があるんだってとリビングにLEDを
やたら理由を付けてくる

100均だよこれ おーとりあえず使えるな
太陽光発電足元ライトを玄関アプローチに
物入れを整理したから…
日暮れが早くなってきたからね倉庫にも燈を…
あとどこにあればいい?
「そうだ玄関ドアにも人感照明つけようか?
鍵穴見つけやすいだろう」

「ネエ、そのうちクリスマスイルミネーションみたいな家になっちゃうよ」笑いで茶化してみたけれど、本人はいたって本気だ
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「ありがとう、私のためにだよねこれ全部」
以前に増して明るさの感度が落ちた私
先月主治医から視野の狭さを数値で告げられた

知り尽くしている我が家でも暗がりに適応できなくなってきているのは薄々わかっていた
でもこんなに見えなくなっていたなんて…
彼も付き添ってくれていたんだあの日は

この沢山の満月の様な光
私の動線に配置してくれたんでしょ
私が暮らしやすい様に怪我のない様にって
私を見守るために

あの時、
君を照らす月でいようとか…あなたは思った?
なら 全く不器用で らしいよ

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