センチメンタル・ジャーニー
いつもの公園を一人ぐるぐる回っては
小さな思い出を拾い集めてる
センチメンタル・ジャーニー
この旅は終わりそうにもない
君と歩き続けた17年の道程
うつろう季節と天気の下で
毎日起こるとるに足らないドキドキハラハラのハプニング
思い出が溢れて尽きない
昨日犬友さんを見かけた
彼女は小さなポメちゃんを連れていた
そのせいかな
今朝はまた振り出しに戻ってしまった様だ
チョコチョコ歩きのあなたが3Dで浮かぶ
使う事ない首輪を手に靴を履く
怖がりだから公園までは抱っこしようかな
6000日のセンチメンタル・ジャーニーは始まったばかりだ
君と見上げる月
ねえ何みてんの?
彼女の頭に頬をくっつけ窓の外を見る
あーきれいなお月様
猫のくせに風流な事
タルタルの背を軽く撫でる
脇肉と腹肉が溶けあってまんまるお盆の様なシルエット
今は娘宅の猫となりたまに預かる程度で
2ヶ月ぶりに里帰りしてきているのだ
お気に入りのテーブルの端で昔の様に
くったり腹ばいになっている
はみ肉すごいねおまえも10歳か還暦だ
おばさんになっ…
手をするりと抜けた次の瞬間
彼女が窓ガラスめがけて大ジャンプ
バンッ
床に落ちた
あっという間の事だった
どした?怒った?
猫はプライドが高い生き物で傷つきやすい
ニャーッ彼女が珍しくないた
何?
大丈夫?
身体を沈め上目遣いでこっちへやって来る
私も近寄る
あーぁびっくりしたよ 怪我してない?
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こんな時、犬だったらわかりやすいのに
ってつい思ってしまう、猫は読めないからね
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ポトッ
立ち止まった彼女の前に虫が転がった
そっか捕まえたんだ!黄金虫とは…イイね
彼女は静かな興奮でまん丸い瞳をしていた
一撃で捕えるとは我が家にいた時と変わらない目も耳も瞬発力もさすがだ
若い頃の元気さを思い出し安心して嬉しくて
幼子にする様に彼女の頭をなでなでしながら
声高に褒めちぎった
ありがとうね
見せに来てくれたの?お土産だった?
いつの間にか彼女の瞳は細くなり
まばたきを始めた
うん わかったよ
大好きだよありがとう
私はゆっくりまばたき返して月を見上げた
彼女の瞳がそこにもあった
君と見上げる君を見上げる
空白
( )空白を埋めよ
小中高と増える空白
学生時代のトラウマ
空白無しの時間刻みのスケジュール帳
社会人の無情
愛する人を失った心の空白
空白だらけの予定表
社会から隔絶されていくような焦りと不安と寂しさ
空白になっていく記憶
誰かが言ってた
空白は埋めるのが前提にあるって
でも人間だもの
ストレスフリーで生きたいよ
空白に苛まれるのはもう勘弁して欲しい
そうか空白を個別に見るから辛いんだな
よし、全てが空だと思えばいいのか
なんか悟っちゃた気分
空白なんて怖くない経だー
台風が過ぎ去って
あーお腹すいた
アタタタ
ちょっと手を貸してくれる?
立ち上がれない
電気つけなきゃ
ねえ 起きてよ
もう夜だよ
アレッ 俺どうした?
何で畳の上で寝てんの
それがね、気を失ってたみたい私達
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徐々に思い出した
昼夜お構いなしの豆台風が去った時を
残されたのは
散らかり放題の部屋
山積みの洗濯物
無音の空間
予想を超えるパワーに全力投球
主人達はネジを巻き続けて格闘した
やればまだまだできる
老いに打ち勝った…
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とはいかないもんで
台風が去るのを見届けたとたんに
あっけなく力尽きた
壊れた人形みたいにピクリともしない
LINEの到着音だけがしじまに響く
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携帯携帯
うわっこんなに溜まってる💦
無事帰宅しました
預かってくれてありがとう、助かったわ
いっくんがまたお泊まりしたいって
10月の予定知らせるね
私また出張なの いいかなー
母さん久しぶり
お願いがあるんだけど来月時間ある?
実は二人とも仕事でさ…
ひとりきり
私が君が存在している
ということは
ひとりきりではなかったということ
命を授け育む過程が人には必須
家庭のないオオカミ少女であっても
誰かが見ていた
手を差し伸べていた
その瞬間瞬間の連続によって
生きながらえてきた
これは確か
人はひとりで生まれてきて
ひとりで死んでいくというけれど
最初から最後までひとりきりということはない