君と見上げる月
ねえ何みてんの?
彼女の頭に頬をくっつけ窓の外を見る
あーきれいなお月様
猫のくせに風流な事
タルタルの背を軽く撫でる
脇肉と腹肉が溶けあってまんまるお盆の様なシルエット
今は娘宅の猫となりたまに預かる程度で
2ヶ月ぶりに里帰りしてきているのだ
お気に入りのテーブルの端で昔の様に
くったり腹ばいになっている
はみ肉すごいねおまえも10歳か還暦だ
おばさんになっ…
手をするりと抜けた次の瞬間
彼女が窓ガラスめがけて大ジャンプ
バンッ
床に落ちた
あっという間の事だった
どした?怒った?
猫はプライドが高い生き物で傷つきやすい
ニャーッ彼女が珍しくないた
何?
大丈夫?
身体を沈め上目遣いでこっちへやって来る
私も近寄る
あーぁびっくりしたよ 怪我してない?
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こんな時、犬だったらわかりやすいのに
ってつい思ってしまう、猫は読めないからね
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ポトッ
立ち止まった彼女の前に虫が転がった
そっか捕まえたんだ!黄金虫とは…イイね
彼女は静かな興奮でまん丸い瞳をしていた
一撃で捕えるとは我が家にいた時と変わらない目も耳も瞬発力もさすがだ
若い頃の元気さを思い出し安心して嬉しくて
幼子にする様に彼女の頭をなでなでしながら
声高に褒めちぎった
ありがとうね
見せに来てくれたの?お土産だった?
いつの間にか彼女の瞳は細くなり
まばたきを始めた
うん わかったよ
大好きだよありがとう
私はゆっくりまばたき返して月を見上げた
彼女の瞳がそこにもあった
君と見上げる君を見上げる
9/15/2025, 2:01:25 AM