手を繋いで
漆黒の闇
今時の日本でこんな夜ありえないね
ここはケアンズ オーストラリア
南半球なんだから南十字星を頼りに…..
とはいかなかった話
----------
その日の宿はエアビーでとった部屋
苦労して探し当てたのは広いお屋敷ではなく
その敷地の一角にあるコテージだった
夕食はついていないよねここ
途中カーブあたりにレストランがあったよ
歩いていけるんじゃない?
住宅街だし危険でもないか
散歩がてら行ってみる?
気軽にふらりと車道に出て右へ
さっき自分達が車で来た方へ向かった
カーブを過ぎた辺りだから遠くないよ
わかった
----------
この辺りとんでもなく広い敷地ばかりだよー
そんな呑気な事を言って通り過ぎたのはまだ日の落ちる前のこと
日が暮れて驚いたのなんのって広すぎる敷地の母屋の灯りは車道から見えないのだ
車はほぼ通らない 家の灯りも届かない
街灯までないなんてねどうなってるの?
怒りというより常識の怖さに愕然としたね
おまけに星空までない悲運
----------
何これ暗闇よ
どっち向いているんだかわかんない
ねぇお先真っ暗って言葉 道路も見えない今にピッタリじゃない スゴっ(笑)
ホント 何にも見えないねー
そのうち目が慣れるんじゃないかと手探りで2、3歩進んだが 諦めた
だって車道の真ん中へ向かっていたかもなんだよ私達
----------
携帯のライトを使う?
帰りのバッテリー大丈夫かな
じゃとりあえず俺ので行こう
この手に掴まって
彼の手が映し出された瞬間手すりを掴むように無機質に握った ルビー婚です私達
(暗闇だとヨチヨチ歩きになっちゃうでしょ)
私達は2人きりの夜道をヨチヨチヨチヨチ
道路に照らし出された白線だけを頼りに進んだ
----------
行けども行けども灯りはない
疲れて心細く思った瞬間だった
半歩前行く人の手の温もりが沁みてきた
なんだかなあ
手を繋ぐなんてハネムーン以来いつぶり?
いやー過去より未来のいつだろう
この人に支えられてヨチヨチ歩いている自分が闇の中にはっきり浮かんだ
そして私はその手の温かさに自分を委ねている
今晩の事は来たる日のシュミレーションなのかも
煌々とした日本じゃ手を繋ぐなんてここ数年ははありえないもの
実家にいた頃毎年決まって見る夢があった
ここはどこ?
梅桃の赤い実が石垣越しに見える
あー生きてるんだ私 怖かった😮💨
ハアハアハア
逃げなきゃ
魔神の足裏が遠く小さく見えるうちに
大魔神が見下ろしているよ
赤い眼に射止められた
分厚い鎧兜が覆い被さる ズドン
アー背中をかすめた逃げ場はない
ズシ〜ンズシ〜ン
グワ〜ン身体が上下する
四つん這いで地面に張り付く
キャー踏み潰される🙈
----------
ハッと目を開けると
ツヤツヤ輝く真っ赤な実
それは石垣脇に たわわに実るユスランメ
ここはどこ?
うちの裏庭?
私魔神に追っかけられて……
赤い実の下に逃げ込んで…..
いつも悪夢はここで終わる
----------------
さくらんぼに似た赤い実と大魔神
幼心にも奇妙な夢だった
その頃裏庭の石垣には黒い大きな蛇が住み着いていてそれを知らないまま子供らは育った
父は家の守り神だとして主と呼んでいたらしい
普段は人が近づかない場所だがそこには美味しい梅桃の木が一本生えていた
夏前になると子供達がこの実を食べにやって来る 中でも足繁くやってくる女の子 それが私
そっかー私を追い払いたかったの主さん
ゆっくりお昼寝できなかったの?ごめんね
怖い夢と大好きなユスランメ
不思議な謎がスルスル解けた
-----------------------------------
注)夢に出て来る大魔神は
大映映画のコワイ方の顔 そのまんまでした
小学校にあがる頃に映画でも見たんでしょうかね??
半世紀以上前の特撮 わかる方います?
ズシンズシンと迫り来る圧倒的存在感の魔神
恐れ慄き逃げ惑う私
魔神は正義の味方で悪人をこらしめるストーリ
隣で誰かが笑ってる?
ああ📻ラジオか
笑い声につられて ククク…..
えっ あずみんが投稿読んでるんだ
さすが実況レベルで聴かせるね うまいなぁ
彼のリアルを傍でふわっと包み込んでる声の主
心地いいコンビネーション
多彩な笑い声で返しているこの人誰?
フフッ アハハハ エヘヘ ……….
文字起こしが追っつかない
尽きる事ない笑い声のマジシャン?
それにしても気持ちのいい朗らかな声
小賢しさなんて欠片もない
ハートにスッと滑り込んできて
コロコロ転がりながら笑いのツボに触れてく
無垢な笑い声っていうのかな いいね好き
次第に気持ちがほぐされ弛むよ
つられてつい笑い声をたててしまっている
案外無垢な自分も好き
好きの箱
パカっと開いた
無垢な笑声を拾って投入
これが満ちたら
大好きが現れる….きっと
お題 大好き
「叶わぬ夢だ」と口にした途端に
その夢が遠のく
言霊っていうじゃないか
そこのしまった!と後悔したあなた
ワンチャンの壺を知ってるかい
後悔を伴った言霊が放り込まれる場所さ
誰もが一つ持っている
言ったばかりの言葉にはしっぽがついてて
それを掴んで引き戻すんだ
コツを教えろってかい
早いに越したことはない
しっぽは1日で消えちゃうそうだからね
さあ君ならどうする?
----------------
俺かい……….
壺を逆さまにしておくかなぁ
そしたらやり直すチャンスもなくなるよ
えっ そうなの?
じゃあ 壺に入り損ねた言葉はそもそもなかったことにして後悔未練もなしなしなし
はい 御破算で 願いましては〜なんちゃって
お次の夢はできました?
そう簡単にはいくかい
この繰り返しが生きるって事よ
少なくとも俺はね
ツワブキはキク科の花
秋深く庭が色を失いかけていく頃
庭隅のあちらこちらに
黄金色の陽だまりが現れる
それはまるで花束のように群れて咲く
今年も会えたね
それにしても何と温かみのある色だこと
澄んだレモン色に奥深さを加えたような
肌寒い日にはつい引き寄せられるわ
あらあら 今日も先を越された フフ
日本ミツバチたちが可愛い羽音をたてている
コロンとした小さな身体が
バニラに似た 甘い香りを纏うように
上下する
つわぶきの花束は庭に佇み楽しむものよ
花の香りと共に
さあ どうぞ ここにおいでよ