手を繋いで
漆黒の闇
今時の日本でこんな夜ありえないね
ここはケアンズ オーストラリア
南半球なんだから南十字星を頼りに…..
とはいかなかった話
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その日の宿はエアビーでとった部屋
苦労して探し当てたのは広いお屋敷ではなく
その敷地の一角にあるコテージだった
夕食はついていないよねここ
途中カーブあたりにレストランがあったよ
歩いていけるんじゃない?
住宅街だし危険でもないか
散歩がてら行ってみる?
気軽にふらりと車道に出て右へ
さっき自分達が車で来た方へ向かった
カーブを過ぎた辺りだから遠くないよ
わかった
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この辺りとんでもなく広い敷地ばかりだよー
そんな呑気な事を言って通り過ぎたのはまだ日の落ちる前のこと
日が暮れて驚いたのなんのって広すぎる敷地の母屋の灯りは車道から見えないのだ
車はほぼ通らない 家の灯りも届かない
街灯までないなんてねどうなってるの?
怒りというより常識の怖さに愕然としたね
おまけに星空までない悲運
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何これ暗闇よ
どっち向いているんだかわかんない
ねぇお先真っ暗って言葉 道路も見えない今にピッタリじゃない スゴっ(笑)
ホント 何にも見えないねー
そのうち目が慣れるんじゃないかと手探りで2、3歩進んだが 諦めた
だって車道の真ん中へ向かっていたかもなんだよ私達
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携帯のライトを使う?
帰りのバッテリー大丈夫かな
じゃとりあえず俺ので行こう
この手に掴まって
彼の手が映し出された瞬間手すりを掴むように無機質に握った ルビー婚です私達
(暗闇だとヨチヨチ歩きになっちゃうでしょ)
私達は2人きりの夜道をヨチヨチヨチヨチ
道路に照らし出された白線だけを頼りに進んだ
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行けども行けども灯りはない
疲れて心細く思った瞬間だった
半歩前行く人の手の温もりが沁みてきた
なんだかなあ
手を繋ぐなんてハネムーン以来いつぶり?
いやー過去より未来のいつだろう
この人に支えられてヨチヨチ歩いている自分が闇の中にはっきり浮かんだ
そして私はその手の温かさに自分を委ねている
今晩の事は来たる日のシュミレーションなのかも
煌々とした日本じゃ手を繋ぐなんてここ数年ははありえないもの
3/20/2025, 2:28:11 PM