倉島は、細田がバイク乗りだということに
心底驚愕した。
なぜなら、細田は細っこくてメガネをかけて、
おおよそ今自分の目の前にある大型バイクを乗りこなすような男に思えなかったからである。
「細田…なんか違うわ」
もたらされた動揺を抑えるために、
倉島は頬を手で撫で回しながら言った。
細田は2つのヘルメットを取り出しながら、
その倉島の発言に体を向ける。
「何が?」
「お前と、そのバイクが結びつかねえ」
細田はふふっと笑いながら、
倉島にヘルメットを渡し、自身もヘルメットを被りながら
「倉島くんが言いそうなことだね」
と平坦に言い放った。
「まあ、気持ちはわかるよ。僕も、倉島くんが読書家だったら『なんか違う!』と思うだろうし」
倉島は慣れない手つきでヘルメットを被る。
「ってか、なんでこんな遠いところに停めてんだ?お前、毎日学校終わりにここまで歩いてるわけ?」
スタンドを倒して、細田はバイクに乗った。
「僕がバイク乗るなんてバレたら、みんなが倉島くんみたいな反応して厄介だからね。後ろ。乗って?」
細田の後ろの席に乗る。
「だからね、これは二人だけの秘密。黙っててね」
「お、おう」
倉島は、なんだか不思議な感覚にとらわれたまま、その大きなバイクが自分と細田を
風の世界に誘う瞬間を味わうことになった。
いつか連れていって
君の住む楽園に
ぼくはコンビニで酒とおつまみを買って
分かち合いたいよ君と
楽しいことやくだらないこと
何の変哲もない平凡な
日常を頭に刻み込もう
オレはとぶぜ
風にのってとんでいくぜ
あさ・ひる・よる
嵐をたえぬいたこのからだ
いったいどこまでいくのかな
オレはどこにとうちゃくするのかな
ときどきこわいけど
大地におちて花をさかせて
オレのこどもたちが
いつかオレとおなじように
風にのっていのちをつないでいく日を信じて
草樹生い茂る森で
私は何を求めるのか
木の葉がサラサラと揺れる静寂の中で
踏みしめた枝がポキリと折れた瞬間
どこかぼんやりとした世界にいた私は
自身の心の輪郭も
血塗られた心の色も
ありありと思い知らされる
今も手に残る感触
あの女の断末魔
ぬるっとした汗と返り血
私があの女を刺したその刹那の歪んだ顔が
脳裏に焼き付いて離れぬ
生きる意味?
そんなのたっぷり寝て、
起きたら美味いもん食って
おもしれぇもん見て楽しんで
自分の脳みそにたっぷり
自分の感想を精製して収納しておくためさ
高機能な人間の脳みそ、
記憶装置として優秀だからな
そういった意味じゃ、
要らねえ人間なんて、
いないってことになるな?