夢を見ていた
内容は――忘れてしまった
ただなんとなく怖かった気がする
少し汗ばんでいる額が
思い出したかのように空気で冷えていく
もっと見ていたかった
目が覚めなくてもよかった
少し鼓動が高なっていた心が
思い出したかのように現実に染まり直っていく
なんとなく怖かった夢
でもそこで生きる私はたしかに自由だった
――あ
早くしないと遅刻しちゃう
~夢を見てたい~
大晦日、それから元日も然り
あくまで一年の内の一日でしかない
その考えは今でも変わらずにいる
とはいえ
年末という一時は嫌いではない
しんとした空気がそうさせるのか
独特の雰囲気に酔わされているのか
つい物思いに耽る時間が増える
世情には無関心であっても
蕎麦は食べてしまうし
年が明ければ慣習に従う
この一年が良いものだったかどうか
結論が出るのはもっとずっと先ではあるが
一年の計が元旦にあるのなら
「まずまずだった」とあえて総括しよう
最後に、慣習に従うといったが
それは仕方なく乗じた方弁ではない
いや、これは蛇足だったかもしれない
とにもかくにも
来年もよろしくお願い致します。
~良いお年を~
きれいに剥けると気持ちがいい
栄養があるとわかっていても
薄皮やスジは取りたくなる
裸のオレンジに心が弾む
半分に分けてから
ひとつずつ口に放る
甘くておいしいな、とか
ちょっと微妙だな、とか
感想を浮かべながらも手は止めない
なくなれば即座に次を手に取り
気づけば夢中になっている
これを「好き」というのかもしれない
~みかん~
最も始まりが穏やかな季節
その瞬間は誰も知らない
「冬になったら」
そう思いながら過ごす夏
やがて夏が終わって
セミも鳴かなくなって
扇風機を使わなくなって
アイスを買う数も減って
押し入れから毛布を引っ張り出して
朝布団から出るのがつらくなって
灯油のにおいが懐かしくて
手袋やマフラーも欲しくなって
こたつが恋しくて
「冬になったな」
今年もわからなかった
~冬になったら~
楽しくもない話をするあなた
わたしは「あはは」と相槌を打つ
楽しかった話をするわたし
あなたは「あはは」と相槌を打った
~あなたとわたし~