8/19/2024, 11:40:45 AM
空模様
子供の頃、風の強い日が好きだった。
向かい風の中、ただ一人立ち尽くすと、形の無い何かに、立ち向かっている心地がした。
何かに。
例えば運命に。
世界に満ちる悪意に。
ハタハタとはためくスカートとゴウゴウと耳元を過ぎる風の音。
私だけが何かに立ち向かう、特別な何者かであるのだと、無条件に信じた。
遠い日の、嵐の夜。
今でも時折、思い出す。
自分だけの特別を疑いなく信じていた、愛しく、幼い日々を。
8/18/2024, 11:53:02 AM
鏡
毎日、鏡を見る。
それは最低限の身だしなみを整えるためであったり、ふと洗顔後に顔を上げた時、鏡に映る自分と目が合ったりする。
その瞬間、去来する思いは様々だ。
何とも思わずただ目を反らし、次の行動に移る。
自分はこんな顔だっただろうかと、マジマジと鏡を覗き込む。
意味もなくニッコリと鏡の自分に微笑みかける日もあれば、見たくもないと顔を歪め、現実から目を背ける日もある。
そこに映る虚像に、さしたる差が無いにも関わらず。
鏡と向き合う時。
私はおそらく、そこには映らない、心。
自分の内側と、向き合っているのだ。