空模様子供の頃、風の強い日が好きだった。向かい風の中、ただ一人立ち尽くすと、形の無い何かに、立ち向かっている心地がした。何かに。例えば運命に。世界に満ちる悪意に。ハタハタとはためくスカートとゴウゴウと耳元を過ぎる風の音。私だけが何かに立ち向かう、特別な何者かであるのだと、無条件に信じた。遠い日の、嵐の夜。今でも時折、思い出す。自分だけの特別を疑いなく信じていた、愛しく、幼い日々を。
8/19/2024, 11:40:45 AM