#踊る様に
石があるから躓くのではなく、
何か絶望が有ってそれを表す為に躓かせるが。
躓く石さえない様な、窪んだコンクリートさえ無いような場所で転んだとしたならどうだろう。
より絶望感を表せるのではないか。
では、踊らせるのはどうか。
音も無い 照明も無い客も居ないステージで踊らせるのは絶望を表すのにぴったりではないだろうか
「嗚呼、それは良い。」
お主はどっちが良い?
転ぶか踊るか
どちらも酷いものだ。
わたしは、じゃあと指差して石ころと踊る人形の両方を往復する。
踊る様に転べば。
いっそ、痛みもあり滑稽でもあり孤独なのでは。
そして転ぶよりも滑らかに立ち上がれるのでは無いか。
「では踊るのは絶望に値しない表現か。」
「いいえ。」
暗闇と無音は孤独で絶望ですが、躓いた石ころにもその後の物語があります。
石ころは立ち上がると言う希望を見せる。
「では、なぜ踊らせる。」
「自己愛です。自己を表現しています。」
しかし観客は疎か、誰の目にも触れる事が無いのならそれは正しく絶望と言えるのではないでしょうか
ほうほう。
「では、それに見合う希望の話をしよう。」
「さて、この駒の希望は何にするかね。」
そうしてカツン、と盤上に置いた駒は正しく踊る様に躓き転んだ所だった。
「そうですね、わたしなら」
#香水
「コイツ贅沢だからよぉ」
一瞬受けた衝撃を辛うじて口を数ミリ引き攣らせただけで済んだのは今までの経験の賜物とも言える。
笑わせてくれる
なら、代わってやろうか。
お前の人生と俺の人生。
どっちが上手く生きられると思う
友達だと思っていた男だったが、腹の底では俺をそう思っていた訳だ。
贅沢だって?
俺の人生が?
そうかよ。
「昨日、お前の香水と同じ値段のうんこ踏んだわ。」
「は?何だよ」
「ペットショップの犬が幾らか知ってるか?そいつらを日割りして更に1日のうんこの回数を平均して計算すると。お前がずーっと使ってるその安物臭い香水と同じ値段になるんだぜ。」
よかったなぁ。
背中をバシバシ叩いてやると、別の奴が腹を抱えて爆笑し始めた。
辞めだな
今日でコイツらと連むのも終いだ。
「あー…あ。つまんね。」
安い香水の匂いが鼻にこびりついて取れねぇ
なぁ、俺のお姫様はどこ?
俺の事を大好きな子ってどうやって会えんの。
なぁ、お姫様。
お前は俺の人生を贅沢だって笑うか
それとも、頑張ったねって慰めてくれる?
どっかに落ちて来ねぇかな、俺のお姫様。
「あ、あのっ!すみませんっ!」
「ん?あ、俺か。何」
「足、退けてくださいっ!」
「あ?なんで?」
「踏んでますっ!わ、私の推しを踏んでますっ!」
見ると残念な事に俺の靴跡がはっきり付いたキラキラのカードが。
ん?どっかで見たなこれ。
「お。やっぱり有った。ね、ごめん。お詫びにコレ貰ってくんね。」
財布から同じキャラの別のカードを抜く。
コイツ俺の推しじゃないんだけどさ、レアカなんだよな。捨てらんねーじゃん。
「えっっ!!?」
「俺、青髪の方狙ってたんだけどダメだったんだよね。」
「レオ君推しなんですかっ!?」
「うん。かっけーじゃん。」
「私っ、レオ君の前バージョン持ってます!要りますか!?」
「まじ、?要るっいるいるいるっ!くれんの?」
「ぜひっ。」
#だから、一人でいたい。
反撃する、というのは。
反撃出来るような準備が整っていないと、実行出来ない。
無鉄砲に出る勢いが有るならまだ良い。
無抵抗に浴び続ける攻撃に、打ちのめされた心で反撃など不可能だ。
少しずつ
手のひら分、いいや、米粒分、いいやまだだ。
砂粒程の理性を取り戻せ。
攻撃される謂れは無い筈だ。
そう思うだろ。
その根拠を探せ。
よく探せ、言葉にしろ。
言い返してくるその攻撃は、意味を成しているのか考えろ。
耐えろ
好機を待て
砂粒を拾い続けろ
理性と脳味噌を動かし続けろ
不利な条件を潰せ
時間か身長か腕力か
傷口を洗え、包帯を巻け、癒える間も考え続けろ
化け物の巣窟で
味方は会った事もない詩人の言葉
「これで、いい」
一人で、良いんだ
そうじゃなかったら、こんなの耐えられない
#嵐が来ようとも
打ち付けた杭が抜けなければ
何も問題は無い
張ったテントがバサバサ音を立てて揺れようと
轟々と騒ぎ立てる風の音がしようとも
確かに1本打ち付けた
ああでも
有れば有るだけ言い
4本でも5本でも
雨風にも負けない1本を打ち付ける事
槌ならもう持ってる
「さぁ。振り上げて根まで。」
#鳥かご
「いいえ。」
閉じ込めているのではないのよ
危険なの
守っているの
傷付かないでほしいのです
此処に居てはくださいませんか
「ううん。嫌だ。外に行きたい。」
例えば転んでも
痛くても
刃物が飛んでくる事だってあるのですよ
それでも行くの
「行く。行くよ。僕を閉じ込めないで。」
でも。
今まで
守ってくれてありがとう。
ーーーと、思っていた。
現実を知るとそれどころでは無い、事を思い知った。
守っている、とはつまり。
理想のままで居させる、と言う事だった。
何も知らない 何も分からない 何も答えない
ふわっとした
そこに只存在するだけの"僕"が欲しかったんだ。
絶望感が押し寄せる。
守ってくれてありがとう?
いいや、違う…僕を見なかったなっ、あんた。
僕は
僕の個性を、僕の言葉を、僕の思考を
知らずにここまで来た。
外の世界で、そんは奴は居ない。
僕は
僕の個性は何で
僕の言葉は何を使って
僕の思考を形作るのか、
「あぁっ、」
脳が、焼き切れそうだーーっ、
「僕は鳥かごをねじ切りたいっ、」