#冬晴れ
ふと、そうだな。
3年に1度か、5年に1度くらい
あぁ、多分大丈夫だ。
と思える日がある
日々を消費するだけで終わる、
今日が何日で何曜日で何の日なのかなんて事には関与せず、こなし続けるそんな日が。
ふと、ある日偶然に。
やって来る。
もう怖いことはないと思える今日。
初めて日記を付けようと思った。
仕事帰りに100円ショップで気に入った柄の手帳を買う。
普通のカレンダー手帳。
予定を書く筈のその小さなマスに文字を入れる。
「ふふっ、いい感じ。」
明日が少し楽しみになって来た。
___
冬晴れの1日でした
凄い晴れなのに凄い寒かったです
_______________
#幸せとは
「何にも脅かされない減ることのない快楽」
例えば
楽しみに買ってしまっておいたアイス
一瞬しかない正月休みを乗り越え
今日を終えた私へのご褒美を食べる
その瞬間の快楽が、減った。
「速やかな自首を薦めますが?」
もしこんな事が続くなら、
私のささやかな快楽が"脅かされる"状態になる。
今、手を打たなくては。
「あーー弁明があります。」
「先に代案を求めます。」
私は怒っていた。
何時もならファミリーパックのアイスを買う。
あなたも私も食べるからだ。
けど、あのアイスだけは特別だった。
たったひとつだけ冷凍庫に忍ばせた
私のご褒美だったのにっ、!
すると、ソファをスタッと立ち上がり寝室へ。
クローゼットを開ける音がして、何かを手に戻って来た。
「昼過ぎに、出来たんだ。かなり良い出来。絶対似合うし、手触りもサイズ感も今までに無い位良い感じで、気付いたら昼過ぎてて、飯食ってなくて、そしたら美味そうなアイスを見付けて思わず。」
革小物を作るこの人は、ここ最近唸りっぱなしで良いデザインが降ってこない、と悩んでた。
それが一昨日から作業部屋に篭ってたから、てっきり別の注文をこなしてると思ってたけど。
結婚してから毎年、財布を作ってくれる。
確かに、今年のこれは今までよりずっと洗練されたデザインな気がする。
分かんないけど。
丸いデザインとファスナーの摘みが可愛い。
「気に入った?」
「うん。可愛い。」
「それで、代案のアイスなんだけど。俺着替えてくるから一緒に行きませんか。金は出すから、実際財布に入れて出す所とか、使ってるとこが見たい。あと、今日星がめっちゃ見えるってラジオが言ってた。」
「つまり?」
「良い物が出来て浮かれてるから、嫁とデートしたいデスすみませんっ。」
これじゃ怒るに怒れないじゃ無いか。
「カッコいい服にしてね。作業着にダウンは嫌。」
「分かった!」
慌て過ぎて壁にぶつかりそうになってる。
よっぽど嬉しかったんだろうな。
「ふっ、大型犬みたい。」
#一年を振り返って
「とりあえず」
「あれだ。」
「あれだね」
「「仕事辞めて良かったぁあああー!」」
「辞めたの俺だけどな。」
「でも辞めるまでの上半期は、顔死んでたよ」
「それなぁ。」
「下半期はあれだよ」
「どれ。」
「誕生日で2人揃って遂にアラサーの仲間入りした事」
「ふっ」
「時の流れが速すぎるっ、!」
「おかしいよなぁ。この前まで23だったんだけどな。」
「まだハゲそうにないね?」
「お前は変わらんな。」
「可愛い?」
「いや。最近は何と言うか、綺麗になってきた。」
「えっ、!?」
「童顔終わったのかもな。」
「へへっ」
「何だよ。」
「ハゲても良いよ。だいすき。」
「俺も。」
「俺も?」
「あ、いしてる!」
「へへっ」
「先輩、みかん食いませんか」
「えっ、?」
大変だ。
この前、ぜんざい食べに行こうと誘われた先で、梅ヶ枝餅と美味しいお茶を楽しんだけど。
「ダンボール一箱有って、早めに捌きたいっス。」
「ふふっ」
「どうしたんスか?何か良いことで、もっ、」
今日はお茶は無いけど。
お弁当袋にとっておきがある。
「てってれー。みかん笑」
「ハハっマジっスか!それはズルいって。」
#みかん
#茶こぼしの後輩と
#てぶくろ
在宅になっていよいよ、低燃費に拍車が掛かった。
朝飯 いらん
昼飯 いらん
晩飯 米炊いてのりたま食うか
コーヒーと葡萄やらマスカット、桃のゼリー飲料か。
コーヒー味のプロテインバーを合間に摘む。
かと言ってデカい金が貯まるという事もなく。
小銭が少しずつ積み上がって行くくらいか。
只、唯一の楽しみが彼女の言うままに買う身の回りの物たち。
「ちょっと遅いけどクリスマスだからねっ」
そう言って手袋をくれた。
「一日中家にいるのに?」
彼女がくれるなら何だって嬉しい。
けど、使ってあげられる場面が無いのは辛い。
「だからだよっ。デートの時はして来てね。いっつも早く来るくせにダウンとパーカーなんて寒過ぎるよ。」
「マフラー有るから。」
「それはこの前のデートで私が買わせたヤツです。」
「気に入ってる。あと温い。」
「ほらねっ。だから手袋もして。」
もそっと手に嵌った黒の手袋。
自分に金を掛ける意味が分からんのに、彼女が選ぶなら何でも嬉しい。
けど。
「あれ、気に入らなかった?黒は嫌?」
シャカシャカ素材が嫌いだった、と首を傾げるけど。
そうじゃ無い。
「手、繋ぎたい、」
「良いよっ。」
あっという間も無く手をぎゅっと繋いでくれた彼女の体温が今日は分からないけど、
何でこのひと手袋してないんだ。
「今日行くとこ、決めた。」
「え、どこ?」
「君の手袋買いに行く。あと帽子。」
「えっ、良いよ。」
「ダメ。あと、君が俺に服を着せたがる気持ちが分かった。俺も手袋買わせたい。付けて欲しい。」
スポン、とくれた手袋の右手側を彼女に嵌めて
左手をダウンのポケットに突っ込んだ。
こんな事、陽の者のする事だって思いながら、彼女の冷たい指を放置させない為なら陰キャも必死になる。
「ふふっ、かっこいい。」
「揶揄わないで、結構、恥ずかしい。」
「がんばれ、がんばれっ。」
変な声が出そうになって奥歯を噛んで耐えた。
三次元彼女が可愛すぎて血反吐出そう。
今の台詞、もう一回言って欲しい。録音したい。
エコー掛けて毎日聞けば仕事頑張れそう。
名前も呼んでもらって、目覚ましボイスも欲しい。
飯も食べたか聞いてくれたら、毎日食えそう。
「どうかした?」
「あ、いや、ちょっと考えてた。」