甘々にすっ転べ

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#幸せとは


「何にも脅かされない減ることのない快楽」

例えば
楽しみに買ってしまっておいたアイス
一瞬しかない正月休みを乗り越え
今日を終えた私へのご褒美を食べる

その瞬間の快楽が、減った。

「速やかな自首を薦めますが?」

もしこんな事が続くなら、
私のささやかな快楽が"脅かされる"状態になる。

今、手を打たなくては。


「あーー弁明があります。」

「先に代案を求めます。」

私は怒っていた。
何時もならファミリーパックのアイスを買う。
あなたも私も食べるからだ。
けど、あのアイスだけは特別だった。

たったひとつだけ冷凍庫に忍ばせた
私のご褒美だったのにっ、!

すると、ソファをスタッと立ち上がり寝室へ。
クローゼットを開ける音がして、何かを手に戻って来た。

「昼過ぎに、出来たんだ。かなり良い出来。絶対似合うし、手触りもサイズ感も今までに無い位良い感じで、気付いたら昼過ぎてて、飯食ってなくて、そしたら美味そうなアイスを見付けて思わず。」


革小物を作るこの人は、ここ最近唸りっぱなしで良いデザインが降ってこない、と悩んでた。

それが一昨日から作業部屋に篭ってたから、てっきり別の注文をこなしてると思ってたけど。

結婚してから毎年、財布を作ってくれる。
確かに、今年のこれは今までよりずっと洗練されたデザインな気がする。

分かんないけど。
丸いデザインとファスナーの摘みが可愛い。

「気に入った?」

「うん。可愛い。」

「それで、代案のアイスなんだけど。俺着替えてくるから一緒に行きませんか。金は出すから、実際財布に入れて出す所とか、使ってるとこが見たい。あと、今日星がめっちゃ見えるってラジオが言ってた。」

「つまり?」

「良い物が出来て浮かれてるから、嫁とデートしたいデスすみませんっ。」


これじゃ怒るに怒れないじゃ無いか。

「カッコいい服にしてね。作業着にダウンは嫌。」

「分かった!」

慌て過ぎて壁にぶつかりそうになってる。
よっぽど嬉しかったんだろうな。

「ふっ、大型犬みたい。」

1/4/2024, 10:59:15 AM