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9/28/2025, 12:34:40 AM

【涙の理由】


毎日の多くのちょっとした段差に右往左往しているあいだに、
いつのまにか何十年が経ってると気づく
そして過去に見てきた先人たちの人生と照らし合わせては慄く
それでもなお、保留したまま持ち歩いてる文章題もある
いのちが終わるときに見つかるかもしれないと思うと、それはそれで楽しみではある
ただ、でも、そうはいっても、
何十年間、保留したままというのはあまりスマートじゃないから、みんな言わない
まんなかのあたりのことは、みんな言わない
そういうのをしつこいとか、執念深いとか、
言ってしまえば流行にのって突き落とせるけど、
そういうのを一途だとか、純粋だとか、
言って大事にしていいと知ってるから、言わない
まんなかを開けると涙がでると知っているから、言わない
いつかは、誰かにそう言えるひとになりたい

9/24/2025, 9:43:46 PM

【時計の針がかさなって】


うっすら記憶してるだけだけど、有名なアニメで有名なキャラクターが有名なキャラクターに言ったことが忘れられない。
「君が止められるのは地球の時間だけだ(範囲に限界があるとかだった気がする)、時間を止めてもその間にも太陽系は動いているから、長く止めてしまうとバランスが崩れて地球は灼熱の星にだってなりうる」というような内容。
その時私、お箸でつまんでたたくあんを落としたわ。

時間を止めると、気温や太陽光はどうなるんだろう?どこらへんまで止まるんだろう?限界があるなら、境目にいる人たちはびっくりするんじゃないかな?
なんてのは、きっと誰もが頭をよぎったことがあるはずだけど、まぁそもそも止まったりしないしね、とたくあんをかじってきた。これからも。
自分たちがつくった装置がうまく動いて、当然真上の12のところで針はいちど重なるんだけど(だってそういうふうに作ったんだから)、それが特別な意味を持つように感じるのは人間だけだなぁ 不思議だなぁ 興味深いなぁ

9/23/2025, 1:25:05 AM

【cloudy】

くもった水の中で懸命に息をしながら、彼は泳ぐ。
キッと周りを見ると、あいつは弁当なんぞ食っている。あいつは貝のようにふたをして寝ている。澱んだ流れに気づかずいい気なもんだ、陰気なやつらめ。

そんな彼を見ていて、私は思いついた。
私はそれをよく見えるように整えて、順序立てて、彼の言語に翻訳して返してみた。彼は顔を上げてそれを見つめ、いつしか親鳥にすがる雛のように後を追ってきた。会話を通じてこの汚れた水にむきあい、そのうち自分で作り上げた完璧なこの物語がおしえていることに気づく。この汚れた水から飛び立つ時がきたのだと。彼は濁った水面をさらに波立たせて、意気揚々と、空へと飛び立っていった。彼の後ろ姿は明るい光に照らされ、逆光で私たちからは表情は見えなかった。ここじゃないどこか、彼が自分に相応しい場所を探す旅に出たことを私は喜んだ。
彼の呼気で濁っていた水は、いまは美しく透き通り、穏やかに流れた。彼を惜しむ者はいなかった。私は光を通して豊かになった水の中で深く呼吸をする。
時折彼から届く手紙に目を通してから小さくちぎり、よく噛んで飲みこむ。そろそろ私が親鳥ではないと気づいてもいい頃だろうか。

8/29/2025, 10:47:24 AM

【心の中の風景は】


息子がジャングルジムにひとりでのぼったときの地上から見上げた空
雨の横断歩道
放課後の廊下に座り込んで読んだ手紙
一発芸で笑い転げた昼休み、ぞうきんと埃の匂い、焼却炉のけむり
ひとりぼっちで歩くまっすぐな坂道
友だちの部屋で朝まで寝ていた朝の枕の位置
人波、川の水音、擦れる草、
無邪気に歌った文学的なあの歌

絵を描くのが大好きなのに、水彩画は苦手だった

7/26/2025, 11:07:01 PM

【涙の跡】


心を尽くした言葉、じんわり温かな想い、
隠されたままの真実、
果たされるべき約束、
すべてはあなたの名誉と生きた証
恋慕と憐れみと淋しさと微笑みと
涙がおちるほど愛おしく
苦しくなるほど愛らしい
古い時代のひとびとはそれを「かなしい」と表現した

あなたという星の軌道
思うほどに眩しく、恋うほどにひそかに
あこがれ、焦がれ、守るように
あなたのかなしみの跡をたどる
その時私は涙を流すだろう

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