【仔猫】
子猫や子犬や子うさぎや子リスや子豚や子山羊や仔象や子マントヒヒや子バイソンみたいな
無条件に愛らしくかわいいものを愛でるとき、私は黙る。集中してしまって、黙る。
【また会いましょう】
いつか、ふたたび、その機会が訪れたなら
もし、もういちど、その時がきたなら
私たち、会いましょう
私、あなたと会いたいです
私と会わなかったあいだのことを話してください
何を見て、何を思ったのか、おしえてください
そうして、私も語ります
あなたと会わなかったあいだのことを聞いてほしいです
あなたはあたたかいコーヒーを淹れてミルクを多めにしてください
私はあなたに、あたたかい黄金のお茶をいれますね
私はチョコレートの包みをもっていきますから
濃いね、でも甘いね、など言いながら頂きましょう
寒がりのあなたの膝に、きちんとブランケットをかけましょう
そんなことがとてもいいです
私たち、会いましょう
また、会いましょう
いつか必ず、私たち、会いましょう
【スリル】
高い木にのぼったり、
背よりも高い台から飛び降りたり、
ジャングルジムでおにごっこしたり、
二階の屋根にのぼったり、
ジェットコースターの高さにわくわくしたり
空に届きそうなビルの上の観覧車で地上を見下ろしたり
子どもの時から、ずっとそんな人間だった
3歳の息子にねだられて乗ったアンパンマンの観覧車
今もし滑車が止まったら
今もしこのドアが開いたら
今もしこのゴンドラが外れたら
想像すると足が震えて、
無邪気に外を眺める息子を膝から離せなかった
あんな怖い観覧車は初めてで、そんな自分に戸惑った
私はあの時、人生でいちばん怖がりだったのかもしれない
ふと思い描いた映像に、叫びたくなって
急いで頭を振る深夜
自分の想像力の豊かさを恨んだけど
そういえば最近はよく眠れる
【飛べない翼】
父の言いつけを忘れて高く飛びすぎたイカロスは
太陽の熱でその翼が溶かされて地上に堕ちた
人間の驕りや、神の領域に踏み込もうとする慢心への戒めの物語と聞くけれど
どうしてこんなにも、自分と重なるのだろう
どうしてこんなにも、無力感にうちのめされるのだろう
父の言いつけを守らなかったから翼を失い
星になった無邪気でとても青年らしいイカロス
私は、あなたが嫌いじゃないわ
【あなたとわたし】
大人の定義 謙虚さの範囲 主張する場所
大切に感じること 自己への認識
ゆるせる弱さ ゆるせる強さ 憧れるひと
知れば知るほど全く違っていたのに
そのことにはたと気づく瞬間を何度も越えたのに
どうして、いつのまに、
こんなに近づいたのだろう
あなたというひと
わたしというひと
似ているところなど何もない
ただわたしが自分と違っているあなたを好ましく思うように、
あなたもわたしを、
あなたもあなたを、
いつだって、笑いながら好きでいてくれるといい
ただそれだけを願う