【星空】
硫酸や硫黄じゃないと生きていけない生き物が、
生態系のてっぺんにいる星もあるよね
これだけ宇宙が広かったら
酸素が毒になる星ってこと
なんてことを思う
自分に与えられた環境で生き抜く方法を見つけ
対応していくことが進化なら
自分たちの環境に対応している生命体しか仮定しないのはなにかおもしろくない
そして驕りだわ
なんてことも思う
【神様だけが知っている】
毎日、毎秒くりかえされる選択で、私たちの人生は作られていく
些細な判断から大きな決断まで、
いつもなにかしらの選択をしながら道を決めていく
エンターキーを押すのか、読点を打つのか
下着をベージュにするか、黒にするか
こしあんにするか、つぶあんにするか
産経にするか、日経にするか
コーヒーにするか、黒烏龍茶にするか
あの角を曲がるか、この角を曲がるか
点滅信号を渡るか、止まるか、
右に視線を向けるか、向けないか
まぁとにかく無数の選択をしながら生きてる
反対の選択をしたら、道は今と大きく違っていた
もう一方の道は、神様だけが知っている
だけどパラレルワールドってあるらしいね
つまり世界は無数にあるってことだ
宇宙みたいだな
【日差し】
その日は薄曇りで、
決して日差しが強いわけじゃなかった
いや、むしろ日差しは弱かった
日傘だって要るか要らないかの境目で
だから油断したんだ
心を開いてしまった
肌にはくっきりと、日焼けの跡
みんなに平等にふりそそく日光で
勝手に火傷なんてはずかしい
私だけ打たれ弱いみたいで
私だけ幼かったみたいで
そのときはいつだってすこしずつ近づいてくる
それと気づかないほどゆっくりと
当たり前の顔をして
そして、気づいたときにはもう引き返せない
ヒリヒリ火傷に軟膏をぬりこむ
痛かったことにすら、いま初めて気づく
まだ赤い
いつまでも赤みが消えない
【窓越しに見えるのは】
校舎の三階の窓辺にすわって勉強していた。
解き終わった後に顔を上げて、ちょっと外を眺める。
夕暮れの空を見て、マロニエの並木を見て、グランドを走り抜ける姿勢の良い君を見る。
あぁ、なんて綺麗なフォーム。
【入道雲】
とあるひとにすっかり心を占領された
見れば見るほどなんて神秘的
あのひとのちかくに行きたいな
あのひとに触れてみたいな
そんなことを思う自分が浅ましく疎ましい
むくむくと頭をもたげるその思いは罪悪感にも似て
こわいから制服のしたに隠して帰ろう
だれにも見つからないように
だれにも見つからないように